薄氷のような盤上で
11.凍てついた歯車
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をつぐんだまま答えない。
その様子を見たリージュは静かに、そして悲しそうに目を伏せた。
「だんまりか。やはり、まだ――赦してくれないんだな」
「………『俺』には何のことかわからんな」
俺、という言葉に含みを持たせたオーネストはそのまま遮った手を退けて前へ進む。
何かを伝えるわけでもなく、リージュも無言でその後ろに続いた。
二人の間にそれ以上の会話はなく、なのに二人の間には他人が口を挟めない場の重さ。
割り込むことが無粋なほどに静かで、寄りも離れもしないもどかしい空間。
まるで二人の時間だけが周囲とは別に流れているように、終わりの見えない無言の歩みはほかの人間を置き去りにした。
「団長の指示ないけど……どうしよう」
「とりゃーず二人に着いていけばいいんじゃない?着いてくんなとは言われてない訳だし」
「そ、そうっすね………」
結局、二人の歩みは3階層下にある安全階層まで延々と続いた。
その間にも多くの魔物が出たが――先を歩いていた二人が歩みを止めることなく全てを一撃で切り裂いたため、誰一人として怪我人は出なかった。
(しかし、さっきの呼び止め……わからんな。普通オーネストを留めようと腕なんか出したら、あいつナチュラルに跳ねのけるかへし折るぞ?うーん、『酷氷姫』と予想以上に複雑な関係なのか……)
ヴェルトールの知る限り、最も近しい存在であるアズでさえあんなふうに呼び止めたら乱暴に手を振り払われる。すなわち彼にとっては彼女がそれだけ非凡な存在なのか、あるいは――
「デレ期か?」
ほんの小さな、足音に紛れて消えるくらいの音量でぼそっと呟く。
発言の直後にヴェルトールの額当てのド真ん中にズガンッ!!とオーネストの投げナイフが直撃して首が盛大にのけぞった。
「グボォォォッ!?衝撃で首がァァァーーーッ!!ここっこここ殺す気かぁッ!?額当てがなければ即死だったぞ!!」
命中する瞬間に辛うじて首を反らしたためにムチ打ちだけは免れたヴェルトールが涙を流して抗議するが、オーネストは全く意に返さない。
「今、ひどく不快な気配を気配を感じたのでな」
「この超能力者がッ!!昔もその『不快な気配』で暗殺者を6,7人撃ち落とした事あるだろッ!!」
「正確にはお前の知らないのを含めて12人だ。お前、13番目の裏切り者になってみるか?」
「意味は分かんないけどものすごく不吉ッ!!」
友人の地獄耳レベルが究極に達していることを悟ったヴェルトールは保身のためにそれ以上考えるのをやめた。そんな二人の様子を、『酷氷姫』は、ほんの少しだけ羨ましそうに見つめていた。
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