薄氷のような盤上で
11.凍てついた歯車
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を確認して愕然とした。
言葉は後ろでも横でもなく前から聞こえてきた。
そして現在、隊の中でただ一人だけ前へ出ている人物といえば――リージュ・ディアマンテその人。
誰よりも厳しく、誰よりも強く、誰よりも冷たい彼女が――まるで年相応の少女のような声を上げていた。
「――俺がそんなに珍しいか、『酷氷姫』」
返り血に染まる剣を握った男が『エピメテウス・ファミリア』の視界に入った。
リージュは既に気付いていたのか何も言わないが、ファミリアたちはその予想外の人物に驚愕の声を上げた。
「なっ……『狂闘士』だと……!?」
「オラリオの異端者……こんなところで出くわすとはな」
オーネスト――『狂闘士』の二つ名を持つ、謎の冒険者。
傲慢不遜、傍若無人、正体不明の暴力剣士としてオラリオ中にその名を轟かせるその男は、オラリオの二大異端者とまで呼ばれるに至っている。神を貶し、己の我を貫く為ならば暴力脅迫なんでもあり。明らかに街の異物である筈の彼は、この街で唯一ギルドにもファミリアにも束縛されない人間である。
と、その背後からヒョコっと猫人間が顔を出した。
「お〜い、俺もいるんですけど?『人形師』のヴェルトールくんもいるんですけど〜?Say,ヴェルトール!はい、みんな一緒にぃ?せーのっ!………(ファミリア側に耳を向けている)」
「喧しい。たんこぶで三段アイスでも作ってほしいか?」
「調子に乗ってスイヤセンっしたぁぁーーー!!」
「声がでかくて喧しい」
ゴキンッ!と頭頂部をぶん殴られたヴェルトールは、こぶで三段鏡餅のような形状になった頭を抑えて「ゥォ……ぁっ……」と静かな悶絶を漏らした。オーネストはそれを一瞥すると別に立ち上がるのを待ちもせずにその場を横切る。
魔物から魔石を回収などしない。社交辞令もなければ気遣いもない。自分の同行者でさえも「付いて来れない奴など知ったことか」と言わんばかりに見捨てるその行動に、ファミリアたちは内心で顔を顰めた。
ダンジョン内に味方を置き去りというのは、この界隈では死ねと言っているようなものである。何せ普通に潜っていても命の危機があるのがダンジョンという場所なのだ。味方を捨ておくとは、そのまま命も捨ておくということなのだ。
それを、オーネストは気にしない。
気にしないからこそ、オーネストは異端者なのだ。
だが、そんな暴君の行く先を雪のように白い手が遮った。
「待て」
「……………」
「こんな場所で『再会』したのも何かの縁だ。一緒に行かないか?」
「……………」
普段はアイアンメイデンなどと揶揄される彼女の発した言葉は、普段の彼女のそれと比べてどこか柔らかい。だが、オーネストは横一線に口
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