暁 〜小説投稿サイト〜
俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
薄氷のような盤上で
11.凍てついた歯車
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非常に短くて素っ気なかった。

「照準が甘い。以上だ」
「ええっ!!もっと罵って下さらないのですか!?」
「我々一同、あの冷酷でゴミを見るような目線と情け容赦ない罵倒を待っていましたのに!!」
「貴様らは既に脳みそが腐っている。ダメになったのからゴミ箱に捨てるだけだ」
「ああっ、それです!そのど〜〜しようもないクソムシを蔑む極寒の目線っ!はぁ、ゾクゾクするぅ……!」

 恍惚の表情や「キャー!お姉さまー!」等という黄色い声を上げて喜ぶ投射隊。
 ………ま、まぁ時折こんな特殊な連中が入ってくることもある。何せここまで冷たいと筋金入りのマゾヒストなら垂涎物だろう。事実、ファミリア内には彼女の罵倒を浴びるためにファミリアを追い出されないギリギリのミスを繰り返す猛者もいるほだ。
 この世にマゾのいる限り『エピメテウス・ファミリア』は安泰だ。
 
 と、そんな集団の元に――風を斬り裂いて『何か』が飛来した。
 今度の隊の反応は早い。重装備の攻城隊は他の部隊を庇う形で陣形を組んで『何か』に警戒。遊撃隊はその合間から注意深く『何か』を観察して臨戦態勢。投射隊は攻撃可能ポジションに速やかに移動し、魔法の詠唱準備や弓矢の構えを取る。

 リージュにとっても100点満点の対応。だが、彼らの警戒に反して、『何か』は既に死んでいた。
 覗き込んだ隊員が息を呑む。魔物は獣に近い姿だが、目元は横一線に斬り裂かれ、両碗は切断され、腹のあちこちが深く貫かれている。足は既に筋が切れて骨格を無視した方向へねじ曲がっており、再生する気配が皆無であることから魔石が砕かれていることが分かる。

「これは……バグベアー?やけに図体がでかいが、全身を切り刻まれてる……」
「『怪物祭』で見たのの2倍って所か。新種……いや、他の魔物の魔石を喰った強化種かもしれん」
「問題は誰がこれをやったのか………ですね」

 ざりっ、と、地面を踏みしめる音がした。
 険しい表情をしたリージュがその音がした方へ一歩踏み出した。

「全隊、警戒体制へ――わたしが前に出る」
「っ!?り、了解!」

 敵か味方かも分からない未知の存在に対して最も犠牲者を減らす術。それは、最強戦力による速やかな殲滅である。つまり、彼女もそれだけ相手に警戒しているという事になる。
 先ほどの魔物は『魔物を襲って強化された疑惑』がある。相手が冒険者ならばそれでもいいが、これよりも強い魔物が返り討ちにしたのだとしたら――命の保証はない。

 緊張が空間を奔る中、地面を踏みしめる音は焦りもせずに規則的な音を垂れて近づく。
 そのシルエットが見えた瞬間、誰かが「あっ……」と気の抜けた声を上げた。この状況下で集中を切らすような真似をしたのは誰だ、と怪訝そうに眉を顰めた隊員たちは、やがてその声の主
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