薄氷のような盤上で
11.凍てついた歯車
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やらないのは、団員の練度を向上させるための措置に他ならない。団員たちが肝を冷やしたのも、彼らが比較的新人の部類であり彼女の実力を正しく理解していなかったことに起因する。
そして彼女は、敵だけではなく味方にも恐ろしく厳しいことで有名だった。
「攻城隊。この程度の事態で隊列を崩すとは、一体何の冗談だ?貴様等のミス一つで守るべき後衛が危険に晒されることをよもや理解していないとは言うまいな………陣形を崩してよい瞬間など戦いの場には存在しない。あるのは陣形の前進、後退、固定、そして陣形の変更のみだ」
「も……申し訳ありません!以後、同じ失態を犯さぬよう誠心誠意努力いたします!!」
「謝らなくともいいし、口だけの決意表明など聞きたくもない。次に同じことをすれば、他のファミリアに被害が及ぶ前に――わたしが貴様等の首を斬る」
「り……了解ッ!!」
感情の抑揚がない淡々とした言葉が、美しい筈の彼女の無機質な冷たさを余計に際立たせる。
この人は本気かもしれない、と思わせるだけの迫力に、攻城隊の体格に恵まれた男達が震えあがった。
リージュの目線は次に遊撃隊へと向かい、遊撃隊の隊員の背筋が一斉に伸びる。
「遊撃隊。貴様らは攻城隊と投射隊の隙を埋める存在だという自覚が欠片でも存在するのか?空中から魔物が飛来した際、奥の魔物の生き残りに気を取られて投射隊への援護を怠ったな。そちらは攻城隊の仕事であり、攻城隊の出張った投射隊を守るのが貴様等だ。それを分かっていて反応が遅れたのならば、それは最早投射隊に対する『味方殺し』と同意義だ。――貴様らは味方と魔物のどちらを殺したい?それとも愚図な自分たちが死にたいのか?」
「いいえ、死にたくありません!!殺したいのは魔物であります、団長!!」
「ならばその回転が悪い脳みそをもう少し効率的に扱うのだな。どうしても回らないのならわたしに相談しろ。頭蓋を割って中に潤滑オイルを指してやる」
「命を賭してでも回転数を間に合わせますッ!!」
遊撃隊もまた、攻城隊と同じく恐ろしいまでに冷酷な言葉に震えあがる。
現在このファミリアでは、主神のエピメテウスでさえ彼女の顔色を窺っている節さえあるほどの恐怖政治が続いている。流石の彼女もダンジョンを出ればそこまで厳しくはしないが、戦闘訓練や試合では全く容赦がない。酷い時は新人十数名を纏めて訓練し、見込みがないからとほぼ全員をファミリアから追い出したほどだ。
なお、この訓練を生き残った数名は現在立派な幹部候補として成長しているので見る目はある。
見る目がある分、本気で冷たく容赦がないのだ。
最後に彼女は投射隊へと目線が向く。
投射隊は偶然ながら全員が女性で構成されており彼女たちもまたリージュの言葉を直立で待つ。が、先ほどの二隊に反してその言葉は
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