薄氷のような盤上で
11.凍てついた歯車
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てるぞ!!」
「高度が高い……これじゃ槍も剣も届かないぞ!」
「――喚くな」
凜、とした一声が隊を一瞬で平静に引き戻す。
彼等にとっては予想外の事態であっても、予めこの階層の魔物と戦法を把握しているリージュは眉一つ動かさずに剣を正面に差した。
その行動の意味が「構え、撃て」を指し示すことが分からない愚昧はこのファミリアにいない。
既に彼女の後ろで魔法及び弓を構えた部隊が、団長の意を汲んで迎撃態勢を整えていた。
照準を定め終えた投射隊長が叫ぶ。
「投射隊、構え!射てーーーッ!」
瞬間、空中を性格無比な弓矢と雷、炎、魔力光の弾丸が乱れ飛んだ。
得物を狙った魔物たちは次々に射撃に巻き込まれ空中で錐揉みになり、その命を散らす。仮に生き延びて地表に落下しようとも、下で待ち構える遊撃隊の剣士たちが素早く刈って無力化した。
――と、魔物の中でもひときわ体の大きな個体が対空射撃を掻い潜ってリージュに迫る。
「キョエエエエエエエエエエエエエッ!!!」
「一匹抜けてきた!?」
「だ、団長!避けて下さい!!」
唯でさえ軽装である彼女がもしもモロにダメージを喰らえば、その華奢な身体を容易に引き裂いてしまうだろう。今から誰かが庇おうにも、援護が間に合わない――と団員たちが肝を冷やした瞬間、もっと肝を冷ます冷たい一言がひゅるり、と流れた。
「凍てつけ」
遅れて、ガガッ!!と地面に何かが突き立った。
よく見れば、それは嘴ごと正面から真っ二つに斬り裂かれた鳥型魔物だった。鮮やかに裂かれた身体は血液一つ漏らすことはない。何故なら、魔物の身体は端から端まで完全に凍結しているから。
「喚くなといった。同じことを言わせるな、愚か者が」
彼女は、その場の誰にも認識できない速度で既に魔物を両断していた。
彼女が握る刀、『村雨・御神渡』から漏れる凍りつくような冷気が、斬られた魔物を凍らせた正体だった。
彼女の持つ固有魔法――『絶対零度』は全てを凍てつかせる氷獄の刃。自らの身体と装備に雪妖精の加護を纏わせ、触れるだけで氷像になるほどの冷気で魔物をも圧倒する。
全力を出せば、その温度はセルシウス度−273.15 ℃――物質のエネルギーが最低になるとされるその温度に達すれば、例え推定レベルがいくつであろうと一撃だけで全身を氷結させて戦闘不能に至らしめうる。
これはステイタスとかそういう問題ではなく、物質存在としての問題。
彼女の天性のバトルセンスと組み合わされることで、彼女の実力はオラリオでも10指に届いている。
――そもそも、本来ならばこの程度の魔物の群れなど彼女ならば1分とかからず皆殺しに出来る。それを
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