暁 〜小説投稿サイト〜
俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
薄氷のような盤上で
11.凍てついた歯車
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識をそちらに流しておかなければならない。
 正直、面倒くさくて帰りたい。しかし昨日もやる気がなくなって帰ったので体が鈍るのは嫌だ。

(ならば、障害は破壊せねばならん。殴って黙らせるか斬って黙らせるか……それが問題だ)
(なんかオーネストが末恐ろしい事を考えてる気がする!?止むを得ん、安全確保のためにちょっと黙っておくか……)

 尚、結局この後ヴェルトールは1分と黙っていられずぺらぺらとどうでもいい話を喋りだし、最終的に頭蓋が割れんばかりに頭を殴られたのであった。 



 = =



 このオラリオのファミリアに数多くの二つ名あれど、『エピメテウス・ファミリア』の『酷氷姫(キオネー)』に比類する『氷』の使い手はない――と冒険者は評する。

 その『酷氷姫(キオネー)』――リージュ・ディアマンテは、雪のように白い身に戦装束を纏って前線に立っていた。艶のある純白の頭髪に、雪のように白い肌を覆う防具は最低限しかなく、代わりにその手には氷のように碧い刀身を晒す刀が握られている。纏う空気は張りつめ、視線だけで相手を凍りつかせそうなほどに冷たい。

 彼女こそが『エピメテウス・ファミリア』の最強の鬼札にして団長。
 主神の旗を掲げし味方に栄えある勝利を。立ちはだかりし(あまね)く敵に絶対の敗北を。
 ファミリア外にまで轟く戦上手で、『戦争遊戯(ウォーゲーム)』に於いてただの一度の敗北も無し。指揮官である当人さえもレベル6を誇り、誰に対しても情け温情をかけることはない。
 その指揮と部下の統率ぶりは、ダンジョン内でも健在であった。

「遊撃隊、5秒後に一斉撤退!!攻城隊、突撃用意!!」

 刃のように鋭い女傑の指示に従い、攻城隊と呼ばれた重装備部隊が密集陣形にて突撃槍を構える。
 魔物たちを浮足立たせる軽装の剣士たち――遊撃隊は全員が自分の役割に区切りをつけ、魔物達の合間を縫って素早く戦線から脱出。直後、5秒が経過した攻城隊は雄叫びを上げて魔物の群れに突進した。

「突撃ぃぃぃぃぃぃぃッ!!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 装備の重量とリーチを生かした攻城隊の足がダンジョンの床を勇ましく踏みしめ、回避の隙がない突撃槍の壁が魔物を容赦なく吹き飛ばしていく。重量、防御力、リーチの三段を活かした戦法は、人間と魔物の両方に対して有用だ。驚くほどにあっさりと突撃槍に蹂躙される魔物たちの死体を前に勝利を確信する冒険者たちだったが――それで終わりではなかった。

 不意に、冒険者たちの足元に影が差す。ハッとして上を見上げた遊撃隊士の目に映ったのは、新手の襲撃だった。空中を飛行する鳥型魔物が、鎧を貫く嘴と眼球を抉る鋭い鉤爪を携えて上空から飛来したのだ。

「くそっ、上だ!上に魔物が残っ
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