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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
10.『死』の喚起
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ズライールのパクリでしょ?」とか言われてしまった。この嬉しくも悲しくもない感情は一体どこにぶつければよいのだろうか。

 しかし、皮肉にもフィルヴィスはここで一大決心をした。
 ここまで来たのなら、もう自分を偽りたくもない。つまり、『死妖精』の評判をここいらで完全に払しょくしたい、と。
 アズライールとの予期せぬ接触やとんでもない事実の判明で意識を持って行かれていたが、フィルヴィスはここいらで『死』そのものとまで称される気配を纏った彼に、専門家として自分の周囲がバタバタ死んでいく理由を判別してもらおうと決めたのだ。

「話は大体分かったよ………うーん、専門家でもないんだけど、そういう事なら確かめてみようか」

 腕を組んでこちらの話を聞いていた――想像以上に見た目と態度は普通の人な――アズライールが、背もたれから体を起こして掌から鎖を出す。

「この鎖はさ、俺の魂を源泉として固着した物体になってるんだ。だからこの鎖を相手に接触させれば、多少は心の中を探れるとは思うよ。君の死の原因とやら、これで探ってしんぜよう。はいコレ握って?」
「あっはい……」

 想像以上に軽い感じでぽいっと差し出された頑丈そうな鎖を受け取る。
 掌の上でじゃらりと鳴ったその鎖は、その温度以上に冷たく暗い――というか、危険物そのものであることを本能が告げるほどのオーラを放っている。

 もしかしたら、自分はとんでもないことを頼んでしまったのかもしれない。

 不意に、鎖の正体も確かめずにそれを握ったフィルヴィスはそんな考えに囚われた。正体不明で呪いを操るという噂のある相手に言われるがままやっているが、もしかしてこの時点でこちらの魂は彼に囚われていたりしないだろうか。

「あ、もう鎖は離していいよー。大体理解できたし」

 ――警戒してたら特に何もなかった。

「………え?ちょ、もう終わりなんですか!?呆気なさすぎでしょ!私のウン年間の苦労の結末こんだけで判明しちゃうの!?」
「うん。割とアッサリアサリのパスタ並に普通に分かったわ」
「頼んでおいて何だけど納得いかない!?」

 どうやらアズライールという男は、想像以上に自由人だったようだ。
 こっちの想像に反して彼はあっさりと事実を口にした。

「結論から言うと、呪いとかそういうのはない。ちょっぴり『しこり』みたいなのはあったけど……それは君の周囲とは関係なかったなぁ。君に関わった人たちは、偶然、あるいは必然によってこの世を去った。何か特別な意志が介入したとかじゃなく、本当に運が悪かっただけだよ」
「――そう、ですか………」

 それは、望んでいた答えだった。
 よかった――私の所為ではない。自分が彼等を殺してきたのではないのだと得心した。
 所詮、噂は噂で偶然は偶然
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