10.『死』の喚起
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身しか見つからなかったと聞いたので、てっきり上半身は魔物に喰われたものと思っていましたが………そうではなかった?」
「推測だけど、オリヴァスという男はそこで死に――『何か』にその魂、或いは脳の残った上半身を回収されて魔物とのハイブリッドになり、そして今も活動しているって事だろう」
自我を持ったまま存在したのなら単純に魂を回収したとも考えられるが、記憶ってのは脳髄の方に詰まっている。言うならば魂は、記憶という名の情報を『脳』というタイトルの本に書きこんでいるのだ。書いた本人の魂は当然覚えているだろうが、本自体も肉体として残っている。
魂のない肉体が記憶を頼りに動きだしたら、それは人間か。
考えて動いているのならば、生きているのか。
魂がないから、人を真似ているだけの人形なのか。
(……オーネストがいつか言ってたな。『人工知能が人間の思考を模す過程と赤ん坊の学習過程は、本質的に違いがない』って。ならば、肉体を管理する魂とは、実は記憶と何も変わらないのかもしれない。……魂という概念も、神が世界を理解するために勝手に作り出した虚構なのかもしれん)
まぁ、その辺は考えても詮無きこと。
正体が何であれ俺は驚かないし、オーネストも同じだろう。
その答えは、俺達が生きていくうえでさしたる意味を持たないのだから。
そういえば今日は調べもので同行できなかったからヴェルトールにあいつの面倒見てもらってるが、今頃何をしてるんだろうか――
「あの……少しいいですか、アズライールさん」
「ん?別にいいけど、何か悩み事?」
ふと気づくと、フィルヴィスちゃんが俺に意を決して質問をしてきていた。
………っていうか、同い年位に見えるけどよく考えたら俺より年上だよね、この子。さんを付けろよデコ助野郎!とか罵倒されたらどうしようかと内心不安だった俺は、彼女の質問に呆気にとられることになる。
「あの………私は呪われているのでしょうか?」
きみは急に何を言っているんだ?というか、何故それを俺に聞く。
取り敢えず、話を聞いてみることにした俺であった。
= =
フィルヴィスは、余りにも多くの仲間を失ってきた。
一番多く失ったのは27階層の悪夢だったが、それ以外にも散発的に私の仲間は何かに巻き込まれて死んでいった。自分の所為ではない何かに。
ただ、事件を機に「あいつが死を呼び寄せている」と噂されて『死妖精』という不名誉な二つ名を押し付けられたに過ぎない。
自分の所為ではない筈だ。
しかし、では何故皆は死んでいくというのだ。
状況証拠とは恐ろしいものだ。自分ではないと理性では思っていても、本能が自らを虚構の危険因子として組み立てて
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