10.『死』の喚起
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いてきたロイマンさんが資料の要点をかいつまんで説明してくれたことには、そういうことらしい。
ロイマンさんはお金を渡せば何でもやってくれるいい人だ。今回のこれも不正な情報漏えいではなく「情報の対価とほんのお気持ち」という方向に流してくれるらしい。いやぁ、身も心も太っ腹ですねぇと思わず言ってしまったが、別段不快には思わなかったのか当人は笑っていた。
「で、この際にオーネストが乱入してサバトマンをぶち殺したと?」
「証拠はありません。何せ死体は結局モンスターの餌になってしまいましたから、当時の目撃者の証言のみです。一応嘘はついていないようですし、彼ならやるだろうということで話が纏まりました」
「曲がりなりにも人間をバッサリかぁ……罰則はあったんですか?」
「ありませんよ。緊急の対応として不適切なところはありませんでしたから、汝罪無しと太鼓判を押しておきました……何より、数少ない生き残りの方々が、敵討ちをしてくれたのならそれでいいと……」
「代理で仇を討つ形になったから庇われたわけね」
確かに、そういう考えもあるのか。
状況からして彼のそれは自爆テロに近く、本人が魔物に喰われず生き延びる確率はゼロに近かったと思われる。だが、それで相手が死ぬというのは「思い通りに死んだ」ことだ。つまり、全部は彼の掌の内。これで終わられると生き残った側は屈辱だろう。
だが、喰われる前にオーネストにブチ殺されたとなると、形式上は一矢報いた形になる。
当時の人々はそれで自分を納得させたのだろう。人間というのは皆、何かの形で区切りがつかないと感情を引きずるものだ。
「粗方の話は理解できました。時間を割かせてしまってすいませんね」
「いえいえお気になさらず。ああ、それと……これを」
手渡されたのは封筒だ。ギルドのものであることを示す封蝋が施してある。
「これは……?【ディオニュソス・ファミリア】のフィルヴィス・シャリア宛、って書いてありますね?」
「オーネストくんが『白髪鬼』オリヴァス――きみの言うサバトマンを殺した光景を見たと証言した唯一の目撃者です。この手紙に、きみたちがオリヴァスらしき人物を見たため、一応話を聞いて事実確認をしたい旨を書いておきました。……ああ、新事実が判明しても報告は結構です。オーネストくんがオリヴァスというのなら、それはオリヴァスでしょうから」
何でもない事のように、ロイマンさんは俺とオーネストの目撃証言を全面的に受け入れた。
元冒険者の魔物化なんて滅茶苦茶な話に、ちゃんと対策を取るつもりらしい。でなければ口にしないか前向きに検討するものだからだ。
そして手紙については、ただ単純に俺が出来る最後の事実確認の段取りを綺麗に整えてくれた、ということらしい。この手紙は紹介状替わ
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