9.紅の君よ、呪われてあれ
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によって吹き飛んだオリヴァスの身体が、突如として地面の下へと消えた。
「斬り飛ばされた反動を利用して、予め空けてあった逃げ道からバックれやがったな?死にぞこないの癖に俺を利用するとはいい度胸だ」
「ええっと……わっ、地面にでっかい穴が!」
おそらく、オーネストの言うとおり最初からここに逃げ込んで難を逃れるつもりだったのだろう。傍観していたアズがゆっくり足を運んで確かめてみると、そこには血痕の残る穴があった。直径は2M近くあり、人どころかそこそこの大きさの魔物でも通れそうである。
「あいつ、人か山羊かモグラかハッキリしない奴だなぁ」
「分からんなら教えてやる。あれは喋る芥だ」
「あーあーお前からしたらそうだろーね……」
オーネストにとって興味のない存在は全部ゴミ扱い。いつものオーネストである。
斬り飛ばされる為に態と挑発染みたことをのたまい、そしてオーネストはそれにまんまと乗せられたという訳だ。顔を顰めたのは言われた内容にではなく、相手の思惑に乗ってしまったという不快感からだったようだ。
何とも言葉が短く殺伐とした再会劇は、こうして呆気なく終了したのだった。
オリヴァスはここで死ぬわけにはいかない。彼の執念は全身全霊でここから逃走し、次の事を起こすつもりだったらしい。
追手が来ない事を確認して速やかに逃走したオリヴァス――かつて『白髪鬼』と呼ばれた狂気の男は、忌々しそうに自分の指の爪を齧りながらヒステリックに叫んだ。
「今までオーネストにばかり目がいっていたが……『告死天使』!奴が力を振るった瞬間、『彼女』が怯えた………奴だけは、何にも優先して殺す必要がある!!」
狂信とは恐ろしいものだ。
死を恐れないが故に、『死そのもの』の恐ろしさを永遠に理解することが出来ないのだから。
= =
――二人はその日、22階層に見覚えのない巨大な植物を発見した。
そして、アズがそれに興味を持って、迷路のような内部に侵入してみたのだ。
思わぬ面倒事にオーネストはすっかりやる気が失せたたしく、二人はあっさりと18層の休憩場所へと引き返すことになった。
オリヴァスが何故ここにいて、どうしてあっさり逃げ出したのか。そして何をしているのか。二人はそれを追求する気もなければ、興味もさほどなかった。ただ、一応ながらアズは後でギルドに報告しておこうと思った。一級冒険者ならそうそう遅れは取らないと思うが、事情も知らない冒険者が手を出して魔物人間が増えたら目覚めが悪いからだ。
全ての事実が判明するのは、それよりもずっと後の話になる。そしてもとよりオリヴァスの事など知りもしないアズにとっては、全く事の重大さを感じていなかった。
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