9.紅の君よ、呪われてあれ
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的な洗脳状態だった」
「と、いう事は……ひょっとしてあっちのお兄さんもそういう系?」
アズが指を差した先にいる男を一瞥したオーネストは、ああ、と呟く。
『白づくめの男』にとってその目線を向けられるのは6年ぶりで――あの日から消えない腹の疼きを否応なしに思い出させる反吐のような再会。はらわたが沸騰するような怒りと屈辱が、全身を渦巻いた。
「よう。テロリストから犬っころに転職したようだな。良く似合ってるぜ、オリヴァス」
「貴様はあの時から何一つ変わっていないな、オーネスト……!忌まわしき血の男!」
白づくめと真紅。
無表情と敵意。
表の危険と裏の危険。
その男達は、外部から内面に到るまでどこまでも対照的だった。
オリヴァス・アクト――元・闇派閥所属の過激派テロリストにして、6年前に死亡が確認された筈の男。その男が生きてここにいることを、オーネストは知らなかった。しかし、仮面をかぶっている上に6年間死んだと思っていたその男を、オーネストは瞬時に言い当てた。
「ふん……やはり驚きもせんか。つまらんが、貴様ならそうだろうな。『神の血を飲んだ貴様なら』精々その程度だろう」
「そういうお前は何年経っても下らないことばかりで変化のない奴だ。一度腹を掻っ捌いてやったというのに、同じことを繰り返す気なんだろう?」
「だとしたら、お前はどうする?邪魔するのか、あの時のように――!!」
オリヴァスと呼ばれた男の放つ狂気を纏った殺意は、半端なものではない。いっそその気配だけでも力のない相手ならば殺せそうな程、地獄の業火のように空気を焼いている。その空気に煽られても眉一つ動かさなかったオーネストだったが、続く一言でその表情が崩れた。
「貴様は自由意志とか自己決定などとうそぶいて満足しているようだが、俺は知っているぞ。貴様は未だに『あれ』に縛られ続けているだけだ!救いようもなく愚かだなぁ、貴様は!!神に捨てられた者よ――」
「―――死ね」
言い終えより早く、オリヴァスは斬り飛ばされていた。
オリヴァスが斬り飛ばされた時には、既にオーネストは剣を握っていた。
まるで最初にオリヴァスが勝手に斬れ、その理由付けのためにオーネストが剣を握ったかのような――因果が逆転したかのような錯覚を覚えるほどに神速い斬撃。
だが、斬ったオーネストは忌々しそうに眉を顰めた。
「斬られるのは、予想済みだ……!!」
「ちっ……最初から俺とやりあう気はなしという訳か」
感情任せに斬ったせいで荒かった上に、ガードで致命傷を避けられている。
それでもガードした腕は今にも千切れそうなほどに深く断たれ、虚空に鮮血の尾を引いていたが――オリヴァスにとってその傷は致命傷足りえない。斬撃
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