9.紅の君よ、呪われてあれ
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ァミリアに回収される。結果だけ見ればオッタルの大勝。予定調和の展開だ。
だが――オッタルもフレイヤも、その決闘を目撃した人も、またその報告を知った敏い冒険者や神たちも、起こった事象を全くそのようには感じなかった。
すなわち、こうである。
『オーネストという男は、一度怒り狂えば神にさえ牙を剥き、最強の戦士の肉すら抉るほどに暴れ狂う一種の化物である』、と。
届きえぬから最強なのだ。触れる事さえ許さぬから『猛者』なのだ。
その最強の種族的象徴とも言える耳を、彼はその荒れ狂う魂だけで千切ってみせた。
もしもこれがオッタルでなく、もっと格下の存在だったのならば――オーネストは自分の臓物をぶちまけられてでも敵の脳髄を叩き潰し、絶命させただろう。逆を言えば、それ程の覚悟を『自分を怒らせた』というだけの理由で振るえる男なのだ。
さらに付け加えるならば、オッタルは絶対の忠誠を誓うフレイヤに「殺してはならない」という命を受けていたにも関わらず、彼を死の直前まで追い込まなければならなくなる状況にまで押し込まれている。鋼よりも固い忠誠心を持つ彼からすれば、あり得ないほどの失態だった。
骨が砕けても肉が千切れても、絶対的な殺意と覇気を纏って立ち上がる彼は、地獄の悪鬼の如く。
オーネストは戦いには負けた。だが、あの日の戦いを支配していたのは間違いなくオーネストだ。
その証拠に、その日の戦いを目撃した人々は、オーネストの殺意に煽られて数日間眠ることが出来なくなってしまったのだから。
ちなみにこの決闘から1週間ほどダンジョンの魔物発生率がオーネストを恐れるかのように急激に落ち込んだのは、彼の伝説の一つとなっている
このように猛烈な『濃さ』があるオーネストに対し、その相方の『告死天使』は彼と全く違う方向で畏れられている。
戦いに於いても愚か者を冷笑するように嗤い、絶対的断罪者としての鎖を振りかざす。
彼は息を切らさない。彼は血を流さない。彼は隙を見せない。彼は恐れを持たない。
彼の背中には、封印されたように鎖に縛られた『死神の如き者』がいつも控えている。
周囲の気温を一気に下げる程の濃密な『死』の気配が、彼と戦おうと言う発想そのものを削いでいく。
その姿は、ある種の絶対的で圧倒的な一つの現実の顕現。
すなわち、死を齎す者――転じて、彼そのものが『死』。
なのに、彼は人の姿として『そこにある』のだ。
『神気』に迫るオーネストの殺意とは違い、彼はまるで『死神の如くある』。
人の筈だ。生きている筈だ。神ではない筈だ。筈なのに――彼の者は、いみじくも畏ろしい。
故に天使。神に非ざるが、神に近しき告死の者。『告死天使』。
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