8.リリリーリ・リーリリ
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は眉をひそめて「おたく、趣味悪いね」と一言漏らすだけだ。無論、気に入らない外道は縛り上げてギルドに突き出したりする訳だが、それでもアズは激情というものを表出させない。
そんな彼が感情を露わにする理由とは何か。
オーネストの見立てが正しければ、彼をそうさせているのは――責任だ。
俺達に未来は要らない。
だが、それは本当は脆くて、いつ崩れるやも知れない砂上の楼閣のような言葉であることをオーネストは知っている。
もし、不安に思わせたくない人を慮ったら。
もし、自分がいなければ路頭に迷う人間がいたら。
もし、その相手を愛してしまったら。
その瞬間から、人は未来を求めてやまなくなる。守る人、守りたい人に対する責任という名の欲動が、否応なくその瞳を先へと向けさせる。それは自らを束縛することでもあり、そして何よりも「人間らしい」ということになる。
アズが不機嫌なのは、その責任とやらを思い出してしまったのだろう。二人の子供に懐かれて、考えてしまったのだ。「自分がくたばったら、この子たちはどうなるのだろう」と。
オーネストはそれを否定しない。ただ、自分はそれをやらないだけだ。
誰にも縛られない。誰にも従わない。誰も求めない。
そんなどうしようもない屑でも、不思議と友達というのは出来てしまう。
言うならば、ゴースト・ファミリアとはそんな屑が積み重なり、折り重なって出来上がっているとも言える。誰もが何かを省みず、そこから目を逸らして生きている。どこまでも自分本位でしかないのに、その繋がりは深く、重く――そして、決定的に愚かしい。
「アズ。守るべきものは人を強くも弱くもする。それを弱さと切り捨てるのも、強さにするもの自由だ。それは愚かしいことかもしれないが、決して間違いにもならない……そんなことはお前には言うまでもないか」
「………お前ってさぁ、人の話聞いてないみたいな態度の癖に、直ぐ人の心の核心を突くな」
知ってたけど、と小さく続けたアズは、ジョッキをテーブルに置いて、ちらりと部屋の奥のベッドで寝転がる二人の幼子(一人は外見だけだが)を見やった。すうすうと寝息を立てる二人の無垢な少女に、アズは頭の裏をかりかりと引っ掻いた。
「……あの二人を守りたいんなら、俺についてくるのは止めた方が賢明だ。そもそも――お前にはダンジョンに潜る理由ってやつが元々欠如している」
「よりにもよってお前が言うかね、それ……本当は誰より無欲だろうが。お前こそ潜る動機や意味がねえっての」
「意味ならあるさ。生の実感という、俺にとっては何にも代えがたい大きな意味がな。お前も確かにそうではあるが、別の道にも行けるだろう。趣味の薬作りがいい証拠だ」
アズはオーネストと同じ、物欲も名声もない。冒険心はそれな
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