5.プリーズギブミーお小遣い
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は、居心地悪そうに貧乏ゆすりする。本当に自覚はまったくないのだろう、ふさがったナイフの刺し傷のことも頭からすっぽ抜けているようだ。
普通手を刺されたら悲鳴を上げて逃げるか激昂して反撃するかだ。痛みは死を連想させ、それは自身を守るための行動を誘発させる。逃げも反撃も、本質的には自己防衛本能だ。なのにアズはそのどちらも選ばなかった。
その時点で既に、彼はリリの想像を超えた人物だった。
「このたびは申し訳ありませんでした………」
「やい、いいよいいよ。どうせ今日は相棒がファイさんに捕まってて暇だったしね。ただ……正直俺の顔見て気絶されたのはショックだったな……」
ずーんと落ち込んで地面に「の」をたくさん書きはじめるアズの子供っぽい仕草に、いよいよリリは全ての警戒心を失った。本当に冒険者らしくない、普通の人だ。そう思うと、『告死天使』と怖がっていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
珍しく――カモや獲物を発見した笑みとも作り笑いとも違う自然な笑みが、漏れた。
「あ、そうだ。ついでだからリリちゃんにも小遣いあげとくか。はいこれ」
「え?あ、いいですよ別……………………に?」
イヤイヤ言いつつその瓶を受け取ったリリは、再びカチンと固まった。
その瓶がなんなのか、なかでチャポチャポ音を立てる液体が何なのか。
『ソーマ・ファミリア』のリリルカ・アーデにはハッキリと分かってしまったから。
「あの、つかぬことをお聞きしますが………これ、『神酒』ですよね………?」
「ああ、まぁね」
「あの市場にはロクに出回らなくて、バッカみたいに高くて、信じられないくらい貴重なものですよね?」
「ま、そうらしいね」
「あの……どこで手に入れたので?」
「ん?ああ、ソーマ・ファミリアの主神とは相棒がちょっとした知り合い(?)で、結構貰ってるんだよ。でも俺もそこまでガブガブ酒飲まないから余っちゃうんだよね。売ったらいい小遣いになると思うよ?」
「――――」
要するに、自分が必死こいて抜け出そうとしているファミリアの主神にこの人は伝手があって。
自分の除退金をゆうに超える値がつく酒を、主神はこの人にポンと渡していて。
それでいて、ひょっとして。
「あの、アズ様。その……主神ソーマに頼んでリリを脱退させるよう促すとか、出来ますか?」
「え、君ソーマ・ファミリアの子だったの?んー、まぁあの人は結構そういうの無関心だしイケると思うよ?」
「おお、なんだか分からないけど早速アズがリリの問題を解決したみたいね!どんなもんだい!!」
「いやいやマリは何もしてな………ん?どしたのリリちゃん固まっちゃって」
「………世間、狭すぎーーーーーーーッ!!!」
リリはこの日二度目の失神をする羽目に陥った。
ど
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