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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
5.プリーズギブミーお小遣い
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の冒険者たちが落とされてきたのか……!!まぁ俺はそんなことをされても「もっと小遣い寄越せ」という催促が背後に見え隠れするのであげないけど。

「というわけで……こちらが冒険者大嫌い!リリルカ・アーデちゃんでぇぇ〜〜す!!」
「どうも!今日もニコニコ貴方の懐からお金をかすめ取るキューティサポーター!リリルカ・アーデで……………あ、『告死天使(アズライール)』………!!」

 営業スマイルで毒を吐いた少女は見る見るうちに顔色が悪くなり、そのまま隣にいたマリネッタにしなだれかかって「きゅう」と意識を失った。

「いやぁ、驚かせようと思ってずっと黙ってたんだけど、ちょっとキツかったかぁ……」
「俺、そんなに怖いの?」
「年齢不詳、レベル不明、町で一番の危険人物を片手間で黙らせ、莫大な資金を持ち、死神みたいな気配を纏って、何の目的があるのか分からないのにいつもニコニコ笑ってる長身の男」
「何それ超怖い。俺は会いたくないなぁその人に」
「いやいや、アズのことだから。現実見ようね?アズ、知らない人からはそういう風に思われてるから」

 ……ごめん、知ってて現実逃避しました。



 = =



 リリは、それまで人生のどん底を生きてきた。

 父親は借金だけを残して勝手に死に、母はおらず、同じファミリアからは良いようにこき使われ、挙句産まれ持った身体は戦いに向かぬ小人族。ファミリア内では邪魔者扱いの癖に利用される時だけは散々使われ、いざ抜けようと思うと手切れ金を払えと抜かす。
 少しでも稼ぐためにと冒険者ヒエラルキーの最下位に属するサポーターをやっていると、戦闘力の低さと立場に弱さに付け込まれて取り分をゼロにされることも珍しくなかった。

 冒険者たちに嘲りと蔑みを浴びせられ、彼女は冒険者という生き物を心底軽蔑した。
 同時に、こんな境遇の人間を生み出すファミリアを作った神に理不尽を感じた。
 
 いつか、絶対にこんな場所は出て行ってやる――!!

 そのために必要な時は他人にこびへつらって「か弱い子供」を演じながら、虎視眈々と金目のものを盗んで逃走する瞬間を伺った。自身の魔法「シンダー・エラ」で性別や種族を偽って目を欺き、コツコツと資金を溜めてきた。何度殴られ、何度蹴られ、何度刃を向けられたか分からない。

 そんな折だ。偶然知り合った貧民街の子供に、「無償で金を渡す男」の話を聞いた。
 何を馬鹿な、そんな殊勝な人間がこのオラリオにいる筈がない。ここは金と欲望の街だ。求めるものを好き好んで搾取される側の弱者に渡す馬鹿がどこにいる。そう言って鼻で笑ってやった。
 よしんば金を貰ったとしても、あとで与えた以上の見返りを要求するに決まっている。そうして力ある者は奪い、求め、その為に人を裏切る存在なのだ。

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