4.くそガキvsくそメイド
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論だ。
だからこそ、リューはエルフとしての在り方を破綻させてでも――。
(……尤も、それは既に必要のない覚悟かもしれませんがね)
リューの目線の先には、アズという青年がオーネストと談笑している姿があった。
アズが来てからオーネストは変わった。いや、本当は変わったのではなく元々抱いていた人間性が戻って来ただけなのかもしれない。ともかく――それは間違いなく善い傾向に違いはなかった。
オーネストを助けていたバラバラの冒険者たちが【ゴースト・ファミリア】と呼ばれるようになったのも、彼の登場で纏まりのようなものが出来たから。彼を中心に、オーネストは人に戻ろうとしてる。
しかし、逆を言えばアズがいなくなれば、また彼は元に戻るだろう。
それが裏切りであれ、死別であれ。
「アズ様」
「ん?なんですかリューさん?追加注文はまだ結構ですけど……」
「いえ……オーネストの世話を、これからもよろしくお願いします」
だから、リューは今日も『告死天使』に言葉をかける。
もしもその信頼と期待を裏切ってオーネストの傷だらけの心に塩を塗ったら、『疾風』の名に賭けて必ず首を狩るという殺意をその裏に潜ませて。
が。
ここにそんな感情の機微を何故か見抜いてしまう空気読まずが一人いた。
「さすがくそメイドは言う事が違うな。人に様付けするくせに敬意どころか殺気を込めてやがる」
あからさまに挑発的な笑みを浮かべるオーネスト当人である。
「このくそガキ……本当に口が減りませんね。手料理食べさせますよ」
「冗談。あれはな、食いものとは言わない。『黄泉竈食』って言うんだ」
「だから貴方に食べさせるのに丁度いいのではないですか。一回あの世の住民になってみればどうですか?きっと病み付きになって出られなくなります」
「お前とリューさんは本当に喧嘩っ早いね……おいオーネスト。食事の場ではもう少し大人しくしてくれんかね?リューさんも不要な挑発は……」
「くそメイド次第だ」
「と、くそガキが言っています」
同僚のシルによく言われるのだが、アズと張り合っている時の私は子供っぽく見えるらしい。つまり傍から見れば私はこのくそ生意味なガキと同レベルに見えると言うのだ。
もしかして、自分はこの男にただ翻弄されているだけなんじゃないか。
眉間に盛大な皺が寄るのを自覚しながら、リューはそう思うことがある。
そして、そんな二人を見たアズはというと。
「リューさんってなんかオーネストに似てることろがありますね。煽り方とか殺気の出し方とか、何より負けず嫌いなところが良く似てます。さしずめリューさんが姉でオーネストはそれに張り合う弟ですね!ははは、は………あれ、どしたん二人とも?」
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