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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
4.くそガキvsくそメイド
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いるのですか、貴方は!?急いで治療しないと――!!』
『――前にも言わなかったか、アストレアの小間使い。俺は独りで、俺だけを信じて、俺の為に、俺のしたいことをする。お前らはそれに必要ない』

 彼は、リューの事を覚えていたらしい。だが、リューは全く嬉しくはなかった。
 むしろ子供の頃の方がまだ感情的で人間らしかった――そう嘆きたくなるほどに、彼の頑ななまでの拒絶意志は揺るぎないものになっていた。結局彼は、そのままリューを押しのけて、鮮血を垂れ流しながら帰っていった。
 翌日、またオーネストが暴れたと街中で噂が流布された。

 数年の年月は彼の周囲に味方と呼べる人間を作っていたが、オーネストは決してその味方に頼ろうとはしなかった。子供のように自分のやりたいことだけを要求し、代価を払えばそれで終わり。思いやりも温情も情けも反省も疲れも何もかもを投げ捨て、結局彼はダンジョンへ向かった。

 何者をも省みず、誰を愛し信頼しようともしない。
 例えそれで孤立することになろうとも、それは彼にとっては都合がいいだけだ。
 彼にとっては、自分を邪魔する人間が減るだけの話なのだから。

 だからこそ――彼を見捨てることはリューにとって敗北なのだ。
 愛の、信頼の、善意の――彼が死ねば、それが負けなのだ。


 彼の眼を思い出すたび、心の内の罪人の嘲笑う声が聞こえる。
 牢屋に叩きこまれ、血塗れの剣を抱えた人殺しエルフの女が嘲笑う。


 ――お前は気に入らない人間は死んでもいいと思うのだろう。

 ――偽りの平穏に満足して、都合の良い事実から目を逸らす。

 ――命は大事だとか死ぬなとか、耳触りのいい偽善を振りかざし。

 ――そうして一人の哀れな男を見捨てて作った平穏の上でへらへら笑うのだ。

 ――それ見たことか、お前らは結局そんな存在なのだ。

 ――だってお前は、所詮人殺しなのだから。

 ――あの日も結局、少年など忘れて殺しに興じていたではないか。

 ――それがお前の本性だ。善意など、おまえにとっては「ついで」だ。


(違う。私はもう未来に生きると決めたんだ。だから、これは意地だ)

 リューは、心の中に住む罪人(じぶん)に打ち勝ちたかった。
 打ち勝てない過去とは人殺しの記憶であり、そして秩序を重んじる主神でさえ止められなかった少年の目だ。罪人は囁くようにお前に奴は救えないと呟く。ならリューはそれの言いなりには絶対になりたくない。

(あんな人間の在り方を認めない。私はオーネストが大嫌いだ。だから、私はもしもの時は――『触ってでも』彼を止める)

 エルフが他人に肌を触れさせることを許すとは、大きな意味を持つ。
 認めないから触るなど、本来なら矛盾している、破たんした理
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