3.騒霊劇場へようそこ
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互いの得物を抱えたまますれ違い、反対方向の敵を殺し尽くしに駆けた。
決して雄々しいとは言えず、むしろ残虐性を剥き出しにしたような戦法で敵を屠るオーネスト。
感情の籠らぬ鎖で、断罪のようにしめやかに命を削り取るアズ。
二人とも互いに互いの邪魔にならぬように敵を吹き飛ばす様はまるで舞踏のようだ。
どちらも残酷なのにどちらも印象が異なる。二人のコンビは嗤いながら瞬く間に虫魔物を殲滅した。
瞬く間に築かれる死骸の山を前に、フィンは乾いた笑みを浮かべる。
「相も変わらず底知れないね、あの子たちは。流石は『二人でフレイヤと戦争が出来る冒険者』なんて言われているだけはある……」
確かに彼等は強い。それは疑いようもない事実だ。
だが、同時にフィンは思う。
(あの二人は、僕が今までに出会ってきたどんな冒険者にも似ていない。あれだけの実力を秘めた戦士であるにも拘らず――どうして君たちからは、『英雄』の気質を微塵も感じられないのだろう)
英雄とは、人々の憧れであり、夢そのもの。
誰よりも気高く、強く、時には泥臭く、そして鮮烈に時代を紡ぐ存在。
彼等には、決して望んで得る事は出来な力という資質を確かに持っている筈だ。
(アズ、オーネスト……君たちは何を望んで迷宮へ潜る。何のためにその力を手に入れた。君達には――何か大切なものが欠けている気がするのは、僕の気のせいなのか?)
【存在しないファミリア】の一員。
ギルドも把握していないレベル不明の冒険者。
神さえ気圧す謎と暴虐の戦士たちは、神住まう街で野放しとなっている。
彼等は何も求めない。求めるのは、己が己らしくある事、ただそれのみだ。
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