3.騒霊劇場へようそこ
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オに来る前は生傷が絶えなかったのよ。今だって時々死にかけてるし。一流の本当に強い戦士なら傷一つ負わずに敵を倒して凱旋でもするものなのに、彼は強敵をたった一人で殺してもまるで敗残兵みたいに傷を引きずってオラリオまで戻ってくる……強い筈なのにその姿がどこか弱弱しいっていうのは戦士としてちょっとね……」
「確かに、あいつそういう所があるよ。勝負に勝っても負けてもボロボロで、もうやめとけよって止めたくなるくらい背中が小さく見える。率先して殺しに行く癖に、殺しきった後は時々悲しそうな顔してる……」
「つまることころ、彼ってアマゾネスの求めるタイプじゃないのよ。でもそうなると、何であんなにも冒険者を辞めさせようとするのかが分からなくて……アイズは何か知ってる?」
「分からない」
端的に答えたアイズは、でも、と続ける。
「オーネストの戦い方、怖い。オラリオで沢山の冒険者を見て来たけど………あんなに怖い戦い方をする人は見たことない」
そう告げると、オーネストの方を不安げにチラッと見た。
若くしてレベル5の高みに辿り着く怖いもの知らずのアイズにしては、こんなことを言うのは珍しい。彼女はむしろオーネストと同じように突っ込んで無茶することの方が多いタイプだと聞いている。しかし彼女から見ると、また違った視点が浮かび上がる。
「普通、戦いは究極的には防衛手段。自分の身を守るために相手を倒す……自分を鍛えるために相手を倒す……傷つくのは副次的な効果でしかない。でも、オーネストは………自分を守ってない感じがする。自分が死んでも相手を殺せればいいって。殺すために自分の命を危険に晒し、自分で傷付けて、自分の弱さと相手の強さ、一切合財を殺そうとしている感じがする」
自分で自分を殺すような殺意、衝動。つまり向死欲動。
それの根源的な原因は俺には分からない。だが、俺達には口癖があった。
その口癖を唱えると、死への恐怖はどこかに吹っ飛ぶ。俺達はそういう存在なのだから。
「ティオナちゃんもアイズちゃんも先を求めてるんだな……俺とオーネストは先なんて求めてない。ただ自分らしく生きていて、そして自分らしく死ねればいい。だから――俺達に未来は要らない」
「それ、狂ってるよ」
ティオネちゃんが責めるような瞳で俺を睨んだ。
別にそんなことはない。人間、どれほど求めてもいつかは全てを失う日が来るのだ。
俺達が明日を必要としないのは、それを知っているから。そして、その時まで自分が自分らしくありたいと思っているからだ。
「自分が自分らしくあるってのは、オーネストにとってはそれくらい重要な事なんだ。尤もオーネストの求める「自分らしく」が何なのかまでは分からない。それでも、あいつはいま死んでも後悔が無いように自分らしくある。……死
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