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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
3.騒霊劇場へようそこ
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 無意識的な自己破壊欲動……というのが、人間にはあるらしい。
 人は生きたいと願う癖に、どこかで破壊的なものを抱いている。


『骸は虚無のゆりかごへ、御魂は無明に抱かれり』


 要するに、人はいつか死ぬってだけの話である。
 それが自殺だのヤケ酒だの大小様々な形で噴出し、死を肯定している訳だ。


『死は甘美にて優麗なれば、とこしえの静寂(しじま)こそ救いなれ』


 俺もまた、死を肯定した。
 ただ自殺志願者と違うのは、俺は生への旅路に死を引きずってるというだけのこと。


『肯定せよ、望まれし滅亡――顕現せよ、内なる破滅』


 生の今際(いまわ)残影(ゆめ)を探す。
 例えいつかは潰えるとしても、生ある内は希望ありだ。


『――死望忌願(デストルドウ)、汝は我と共に在り』


 こうして俺はいつものように詠唱を終え、迷宮の魔物を鏖殺するために俺の中の死神を呼び出した。

 本当は詠唱無しで普通に呼び出せるんだけどね。
 オーネストも初めて見るらしいこの辺の芋虫モンスターは、どうも重装備を溶かすレベルの強酸を体内に含蓄してるようだ。そんなもん浴びたら服が溶けて、ついでに当たり屋戦法のオーネストは全身が溶けてしまうので『死望忌願』の力を借りるのだ。
 こいつは言うならば魔力的な何かで形成された魔人のようなもの。
 ものすごく漠然としているので酸など効きはしない。……たぶん。

「刈り尽くせ断罪の鎌――ネフェシュガズラ!」
『???? ???? ????? ????――!』

 相変わらず何語なのやらよく分からない言葉を放ちながらその手に鎌を握った『死望忌願』は、手に持った巨大な大鎌を横薙ぎに振り翳した。
 瞬間、『死望忌願』の鎌から斬撃という名の『死』が降り注ぎ、前に存在した魔物の群れが障子を裂くように両断された。ついでに壁から出現しようとしていた魔物が十数体、壁ごと横一線にされる。

 一部の上級者曰く、「魔物が壁から出てくるなら壁を壊せばいいじゃない」、らしい。前に調べてみたら、壁を壊したら一時的に魔物は出現しなくなるが、どれだけ派手に壊しても2,3時間で元の形に自己修復しているみたいだ。こうしてみると魔物も人間で言う免疫のように思えてきて生物的だ。迷宮(ダンジョン)というのはものすごく巨大な生命体なのかもしれない。

 斬撃から遅れて、べちゃべちゃと汚らしい音を立てて迷宮に転がる魔物の死骸と魔石。なんかもう、見た目がエグイことになっていらっしゃる。生理的に見ていたくない光景に、俺は正直魔石の回収を諦めたくなった。流石のオーネストもこれには顔を顰めている。

「汚ぇ音だな。しかも次から次へと湧いて出てうざったいったらありゃしねぇ。これまでの魔物と出
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