滲むような死と共に
1.俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
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使わないために儲けを気にしないのだ。
そういやアイツ昔『イシュタル・ファミリア』から戦闘娼婦を買ったことあったな。
なんか騙されて働かされてたらしいので助けたんだと思うが、あの時も3億ヴァリスをポンと出すものだからぶったまげた。実はファミリア以上に金持ちなのかもしれない。
まぁそれはそれとして。俺は無言で血塗れオーネストの頭にポーションをぶっかける。
オーネストとて一応人間。苛烈な戦いの中で結構ダメージを喰らっている筈だ。が、コイツは怪我をしててもよほどひどくない限りは平気な顔して放置するタイプ。なので回復させるのは俺の役目である。
当の本人は頭からポーションを垂れ流しつつ俺を横目でジロリと見ている。水も滴るいい男を地で行くイケメン加減だが、その分異様な威圧感を感じる。感謝されてないのかもしれない。お礼を言われたことないし。
「あ、今ので最後か……オーネスト。ポーション尽きたから帰ろうぜ?」
「そうか。俺は先に行くから勝手に帰れ」
「まぁそう言わずに。荷物もそろそろ一杯だろ?」
「知るか。俺は行く」
……こんなでも俺達は友達である。
友達、の筈だよな?なんか不安になってきた。
金髪金目の美丈夫であるオーネストは目つき鋭い系のイケメンなのだが、その実エルフより気難しくて獣より狂暴な男だ。基本的に他人に体を触らせないし、無理に触ると最悪斬撃が飛んでくる。俺は一応友達なので肩に手をかけるくらいは許してくれるが、それでも顔を顰めるくらいはする。
それくらい気難しい男だから、俺のいう事も基本的には素直に聞いてくれないのだ。
しかし、オーネストはここで放っておくとポーションが切れようが武器が壊れようが制圧前進を続け、最終的には階層主相手に素手で殴り合いを仕掛けている所を最前線ファミリアに止められてぼろ雑巾みたいになって強制送還されながら「邪魔しやがって」と悪態を吐く男である。
要するに放っておくと死ぬから、どうにか地上へ連れ帰らねばならない。
「はぁ〜……ったく!『死望忌願』!オーネストを縛り上げろ!」
瞬間、俺の影から濃密なまでの『死』の予感と共に、ずるりと死神が這い出る。
常に俺に寄り添う、俺自身の内包する側面の一つ。俺の心の分身。
『????? ?? ?????――!』
幽世へと魂を招くような腹の底が冷える気配の主――それが『死望忌願』。
鎖で十字架を背に縛り付けられた3M近いコートの魔人は、奇妙な文字が描かれた包帯の隙間から漏れる赤い眼光をオーネストに向け、その身体に纏った鎖を投擲した。
「テメ……ぐおおッ!?」
こちらが本気であることに気付いたオーネストから小心者ならそれだけで死にそうな苛烈な殺意が浴びせ
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