滲むような死と共に
1.俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
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ったその足が出来るだけ痛まないようにおぶる。
冷え切った体の中で、鼓動だけが確かに感じられる。
生きてるな、って感じる。
「ちょっとしんどくはあるけどさ……ま、一緒に行ってみようぜ」
「気楽だな、お前は……いいさ。俺はお前だものな。いつまでも付き合ってやるさ。お前の影、お前の仮面――もう一人のお前として」
暗闇の世界が、砕け散った。
= =
トンネルを抜けると、そこはオラリオだった。
という冒頭で小説を書こうとしたら、親友のオーネストに「『雪国』のパクリかよ」と突っ込まれた。この冒頭を知っているだけでなく小説のタイトルまで知っているとはつくづく教養がある奴だ。俺と違って。
俺はアズライール・チェンバレット。このオラリオではそんな名前を名乗っている。
ちなみにアズライールというのは元は他の神に勝手につけられた仇名で、オーネスト曰く「イスラム教の死神(正確には天使)」らしい。お前なんでも知ってるなオーネスト。よく考えたらオラリオの知識の9割はお前に教えてもらった気がするぞ。
かつて、俺はコンクリートジャングルに住まう普通の人間だった。
といっても、普通というのはちょっと違うかもしれない。
俺は当時心が空っぽだった。やりたいこともないし、やりたくないこともない。自分と言うものが何なのやらあやふやのまま他の人と適当に歩調を合わせて生きていた。歩く屍、とでも言うべきだったんだろう。
そんな風に生きて、老いて、意義を見いだせずに死んでいくことが何より怖かった。夢が欲しかった。なのに自力ではどうしようも出来ず――結局、最後まで何をすればいいのやらわからないまま何かしらの災害に巻き込まれ、よく分からないまま意識が闇に落ちた。
で、その先で十字架に鎖で括りつけられた俺を発見したのだ。
俺はそこで結局生きることを選んだ。
後になって思えば、俺は死にたかったのかもしれない。
でも今は生と死が同梱してるのでどっちでもないのだが。
もう一人の俺を鎖から解放すると、更に場面は変わり、何故か俺はこのオラリオにいた。
2,3年ほど前の話だが、今もあの瞬間は鮮明に覚えている。
街を行き交うコスプレイヤーに天高くそびえるバベル。
唐突過ぎる剣と魔法の世界へのデビューだった。
モロにファンタジーな世界に困惑しまくり、行き場所も頼れる人もゼロ。
偶然にもオーネストが俺を助けてくれなきゃ今頃野垂れ死んでたかもしれない。
ちなみにオーネストが俺を助けた理由は、彼も俺と同じく現代日本からここに来たクチだったから。……っていうか、多分だがそれがなければ普通に見捨てられてた気がする。きっかけって凄いね。
とはいっても彼の場合は赤子の頃からこ
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