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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
滲むような死と共に
1.俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
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は必ずやってくる。
 その瞬間、人は認識の外へと弾きだされる。

「もう、生きるのをやめないか」

 諭すような囁きだった。

「生きてたって苦しいだけだし、生きてるから死ぬことが怖くなるんだ。生きるのをやめないか。生きてるから悩まなきゃいけないし、痛みを感じなきゃいけないんだ」

 生きとし生けるものは皆、死を恐れる。
 人もまた、死を恐れる。
 だが死の恐怖を実感できない世界で生きていると、生きる事が辛くなってくる。生きている自分がどうしようもなく惨めで、自力では前にも後ろにも進めないままずるずると老いだけを重ねていく。みっともなく生にしがみつくことに嫌気がさす。
 死を恐れるあまりに勝ち取った人間の世界が、逆に死を囁くように感じる。

「なあ、死のうぜ?俺もお前も、一緒に生きるのを止めよう。生から解脱し、 静寂(しじま)に沈もう。刹那と那由多が永遠に交錯する世界へと旅立とう」

 気付けば、俺の両手には一丁ずつ拳銃が握られていた。同時に、脚に鎖が絡みつく。
 鎌首をもたげる蛇のようにうねり、絡まり、万力で締め上げられるように足をぎりぎりと締め付けた。
 激痛に体を震わせるが、どういう訳か手に握った拳銃だけは離すことが出来なかった。

 これを使って、殺してくれと言う事か。

「さあ、死のう。いっしょに死のう。俺はお前で、お前は俺だ。俺が死ぬ時はお前も死ぬ時だ。一緒なら寂しくねえだろ?一緒に解放されようぜ」

 拳銃を見つめる。装填された弾丸はそれぞれ一発ずつ。
 一つはあいつに、もう一つは自分に。そういうことだろう。
 安全装置も撃鉄も、全て準備は整っていた。

 死ぬのは怖い気もするが、生きているのも辛いだけだ。
 ならいっそ――そんな彼の願いは、きっと自分の願いでもあるのかもしれない。
 トリガーに指をかけ、グリップを両手で握る締める。狙いを定め、息を吸い込み――


 引金を、引いた。


 一発は俺の脚の、もう一発はあいつの鎖めがけて。


 縛っていた鎖が、襲いくる鎖が、銃弾によってひん曲がり、砕ける。


「俺は思うんだ……『それでも人は夢を見る』。いつか今より幸せだと思える。そんな自己満足を得られる日が来るかもしれない。……なに、どうせ帰り道は一緒なんだ。死ぬまでの旅路――旅は道ずれ世は情け、だろ」
「俺を拒絶しないのか」
「しないさ」
「なのに、俺の提案を受け入れないのか」
「俺もお前に提案したのさ」

 死は避けられないから、それを認めない訳にはいかない。
 でも、死神に待ってもらう事くらいは出来るから。

 崩れ落ちる鎖を振りほどき、十字架から降ろされた俺の肩を掴んだ。両足に刺さった2本の槍はからりと音を立てて床に転がり、動かなくな
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