IF 完全平和ルート
偽装結婚シリーズ
偽装結婚の舞台上
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を射抜いた。
――その目に自分の姿が映っていると言う事に、満足を覚える。
「目が覚めて早々……一番に見るのがお前の仏頂面か」
「不満そうだな」
手にしたままの手首を軽く握ったまま喉の奥で笑ってみせれば、不愉快そうに眉根が顰められる。
空いた片手で額にかかっていた黒髪を鬱陶し気に払いながら、どこか非難を帯びた眼差しが己へと向けられた。
「そう言うお前は嬉しそうだな」
「嬉しいとも。ようやく貴様に勝てたのだから」
「……初黒星があれかぁ」
悲しそうに溜め息を吐かれるが、そんな事はどうでもいい。
その姿を見つめながら、掴んだままの手首に微かに力を込めた。
「……一つ聞きたい事がある」
「言ってみろ。答えられる限りでなら答えてやる」
何せ今の自分は気分がいいのだから。
嘯ぶいてみせれば、忌々しそうに眉根が寄せられる。
そう言った表情を作るのは専ら己の方だったせいか、奴のその顔に満足感を覚えた。
「――――離婚に応じる気はないのか?」
……まだそう言うことを言うのか、こいつは。
胸の奥が波打って、感情のままに奴の手首を握りしめる。そうすれば痛そうに顔が顰められるが、無視した。
「お前の性格には少々問題があるが、それでもお前の事を好いてくれる可愛い女の子は出て来るだろう。もう偽装結婚に付き合う必要だってないんだぞ」
ぶん殴ってやりたいとは思ったものの、それは先程の乱闘で既に行った後だ。
これ以上怪我人に鞭打つ様な真似をする訳にもいかないので、ただ口を閉ざす。
「痛い、痛い、痛いぃぃ!! おまっ、オレの骨を折る気か!?」
そうしてじっと黙っていれば、急に上がった悲鳴に意識に引き戻された。
どうやら考え込んでいる間に手首にかけていた力が強まっていたらしい。
力を緩めてみせれば、細い手首に紫色の痣の様な物が出来ていた。
「自分の握力考えろ!! 折れるかと思ったじゃないか!!」
「折れた所で直ちに修復するくせに何を言う」
「何が悲しゅうて、骨が折られるのを甘んじて受けなきゃいかんのだ」
ぶつぶつと口で文句を言っていたが、不意に強い輝きを宿した目で己を見やる――否、睨む。
鋭い輝きを宿した黒い瞳はここ数年の間向けられていた詫びを含んだ不愉快な物ではなく、かつて戦場で見えていた時に向けられていたのと同じ物だった。
「――お前、本気でそう思っているのか?」
「何の事だ?」
「離婚に応じる気がないんだな?」
まるで言葉遊びの様な、そんな会話のやり取り。
奴が男として振る舞っていた時同様に、気兼ねする事の無い対等な立場の会話――それが愉しくて口元が弧を描く。
「……言った筈だ。オレは貴様以外を妻と呼ぶ気に
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