第5話
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いた。
その本の画像を見たヤザワが、驚愕の表情を浮かべて立ち上がった。
「おい! これは!」
「ええ、完遂時にはこの著書。モラデウスの月下絶唱。その写本をお渡しします」
ヤザワの喉が唸る。この態度でよほどの希少本なのだと、ガユスにもわかった。
「どうなされますか?」
軍人の質問に対して、二人は数秒程の沈黙を返す。
ガユスが口を開いた。
「少々考える時間を頂けないでしょうか?」
「ええ、但しあと二時間以内でお願いします。それ以上の場合。依頼はご辞退なされたと考えます」
他にも候補はいる、と軍人は言外に告げている。
「ええ、すぐですので」
ガユスとヤザワは立ち上がり、部屋の外に出た。
そのまま声を低くした話し合う。
「どうする受けるか。受けないか」
「受けたい。受けたいですが」
ヤザワは、苦渋の表情でガユスを見つめていた。
依頼にはある問題がある。
「ハオル王国の事は、聞いたことがありますよね?」
質問に対してガユスはうなずいた。二人ともかなり悩んでいるようである。
ハオル王国について説明しよう。ゴフラル織りという伝統工芸が売りで、主産業は希少金属の輸出。特に特徴のない小国家といった処の平和な国だった。だった、つまり過去形である。
今現在の王であり依頼主でもあるリベス二世は典型的な暴君であり、国は圧政と重税で貧困の一途を辿っている。
すでに内乱も近いと見なされている。
「風のうわさでは、ハオル王国の重要人物が攻性咒式士達を囲っている、らしいですね」
「その噂は俺も聞いたことがある」ガユスは一度頷く。「奴かと思ったが、違うようだ。そっちの依頼人は宗教家だと聞いたことがある」
ガユスは一度部屋の扉に視線を移動させた。
ヤザワも頭痛がするのか頭に手を置く。
「つまり、集めているのは内乱を起こす側。つまり革命側でしょう」
「圧政に苦しめられた国民達は革命を求めている」
二人は互いに意見を重ねていく。
「だけど、報酬は魅力的にもほどがあります」
「そんなにか」
ヤザワは苦々しげな表情を浮かべながらも、ガユスの質問に頷いた。
「写本とはいえ売れば、二千万イェンは軽くするものです。最低に見積もって、です」
「…………本当ですか?」
高額のあまり、ガユスの口調が敬語になってしまう。
それほどの衝撃を受けたようだった。
「拙者は再度写本したかデータ版を持っていれば良いので…………。依頼の報酬と、写本を売った金額」
「それだけの金があれば、今までのと合わせれば、目標金額になる」
彼等にも目指すべき未来があった。
エリダナで一旗揚げる。有名になって自分の事務所を得るのは、咒式
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