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鎮守府の床屋
前編
6.戦後に向けて……職業調査
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磨、おつかれ〜」
「ク、クマ〜……」

 俺の終了の合図を受け、球磨はホッと一息ついたようだ。ほんのりほっぺたが赤くなってる気がするけど、別にカミソリ負けしたってわけじゃないよな……?

「なんか妙にしおらしいけど、どうかしたか?」
「だ、黙れクマ……ッ」

 んー……なんか妙だな。別にいいけど。

「以上でひげそりは終了だ暁ちゃん。床屋の仕事はこんな感じかな? 基本は髪切って、シャンプーして、髭剃りして……」
「これで終わり?」
「うん。あとはカラーリングとかもあるけど……それはどっちかというと美容師さんの範疇だからね」
「床屋さんと美容師さんは違うの?」
「うん」

 ここで俺は床屋と美容師の違いを簡単に説明したが、暁ちゃんはよく分かってないようだった。まぁ俺もじい様に懇切丁寧に説明されてもよくわかんなくて、『よく分からんのなら両方の免許を取れ』と最終的に逆ギレに近いアドバイスをされたんだもんなぁ……。

「うー……よくわからないけど……お客さんをキレイにするのが美容師さんで、お客さんの身だしなみを整えてあげるのが床屋さん?」
「うん。そんな感じだね」
「これが分かれば一人前のレディー?」
「うん……? まぁ、分からなくても一人前のレディーかな?」

 その後はがんばった暁ちゃんと、やけにポヤポヤ呆けている球磨とともに食堂に昼食に向かった。調理担当の提督さんが

「今日は暁の職業調査の再開記念だ!!」

 と妙に張り切っていて、この日の昼食のメニューは全員お子様ランチになった。暁ちゃんの分はもちろんのこと、俺や球磨、飲兵衛の隼鷹やビス子たちまでお子様ランチだった。

「司令官! 暁は一人前のレディーなんだから、お子様ランチなんていらないのよ! ぷんすか!!」

 とかわいく怒り狂っていた暁ちゃんだったが、全員の中で二番目にはしゃいでいたのは、他ならぬ暁ちゃん自身だった。

「ちょっと提督! この夢のようなランチプレートは一体何なの?! ……えちょっと待って!! このチキンライスに刺さってる国旗、私の祖国ドイツの国旗じゃない!! やだこのケチャップハンバーグ絶品だわ! 提督あなたホントにヤパーネリンなの?! あーでも味噌汁がないのは減点だわね……私、赤だしが飲みたかったわ……あでもこのお吸い物は絶品よ?」

 あとこれは完全に余談だが、一番はしゃいでいたのはビス子だった。

 ……そしてちょっとした異変というか……あの顔剃り実演の後から、妙に球磨がちらちらこっちの様子を伺ってくるんだよね。

「……」
「……」
「……なんだよ?」
「な、なんでもないクマッ」
「?」

 そういえば、球磨に顔剃りの感想を聞くのを忘れてた……

「お前さ、今日顔剃りしてやったろ?」

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