暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
前編
6.戦後に向けて……職業調査
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「すまんが、暁にハルを調査してもらう」

 ある日、珍しく執務室に呼ばれた俺は、挨拶もそこそこに提督からこんなことを言われた。

「俺を調査? 身辺調査か何かですか?」

 でも身辺調査ならココに来る前に色々やられたよな……国籍や経歴はもちろんのこと、反社会的活動への関与の有無とか……でもここに来て半年ぐらい経ってるもんな。半年毎に情報更新したりするもんなのかな?

「あーいや、そういう堅苦しいものじゃない。言ってみれば小学校の頃の社会科見学で職業調査みたいなのやったろ? あれと同じノリだよ」
「あーなるほど。職業について色々調べて、発表会で『床屋さんの大変なところ』とかをプレゼンするあれですか」
「目的は違うが、ノリは概ねあんな感じだな」

 提督は、戦争が終わった後の艦娘の職業選択の幅に関して、若干の懸念があるらしい。艦娘は生まれてから今まで、海上戦闘の経験しかない。戦争が終わり、艦娘が実社会で暮らすことになった時、社会のことを何も知らない状況で放り出すのは忍びないそうだ。

「まぁある程度社会常識をレクチャーしてはいるんだが……それでも中々実社会とはかけ離れた生活を続けているだけに、浮世離れしてるヤツが多いのも事実だ」
「ですねぇ」

 特に約一名……動物みたいな名前をしたアホがいますもんね……俺この前の大掃除の時、ナチュラルに営利誘拐されましたもんね……という言葉を、俺は必死にこらえた。

――クマっ

 妖怪アホ毛女の邪悪なイメージが自分の背後に浮き出たような気がして、俺は背後に向かって手をパタパタと振った。

「何やってるんだ?」
「……いや、邪悪なイメージを払拭しようかと……」
「? ……まぁいいか。特に暁に関しては、将来の適正を見極め、世の中への見識を深めるという意味で、昔はよくこの鎮守府に出入りしていた外部の人間の職業の詳細を調べさせていたんだ」
「なるほど。いろんな仕事を調べさせて、今の内に本人の興味が湧く仕事を見つけさせて、戦争が終わった後で、自身が悩んだり困ったりしないようにしておくってことですね」
「その通りだ。人手不足と戦闘の激化からしばらくやめていたんだが、今は少し落ち着いてるし、ハルにも協力してもらおうかと思ってな」

 真剣な眼差しでこう語り、艦娘たちの将来を真剣に憂いているこの人は、やはり優しい人だと言える。ここに来て痛感したが、確かに個性的な連中ではあるものの、接していると艦娘のやつらは人間と同じなんだと実感できる。

 そんな存在だからこそ、提督さんはそこからさらに一歩進んで、彼女たちの将来に戦い以外の道を残してやりたいのだろう。それが例え本人たちが望んだことであったとしても、人生が戦いだけだなんて悲しすぎる。

「分かりました。お手伝いします」
「よ
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