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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章始節 奇縁のプレリュード  2023/11
2話 試練の幕開け
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ないが、言うなれば興が乗ったというやつだ。自分も余裕があるわけではないが、ある程度まで行くと吹っ切れることも肝要だろう。


「だったら、暫くは話し相手にでもなってくれればそれで十分だ。PT内でのチャット(会話)はネトゲの華だろ? 多少のアイテムだって、どうしても気が収まらないなら後で返してくれればいいさ」


 デスクトップの画面を眺めながらのクエスト周回なんて、ゲームを純粋に楽しめていた頃がもう遥か昔の出来事のように思えてならないが、あれはあれで味わいのあるものだ。そこで成立していたプレイヤー間の遣り取りがSAOでは成立し得ないこともない。確かに匿名性が薄れてMMOとしては異例な環境ではあるが、それでもMMOであることに変わりはないのだから。自分でも苦しい方便に思えなくもないが、当のグリセルダさんには効果覿面であったらしい。


「………そうよね。これ(SAO)だって、本当はそういう遊びだったのよね」
「キーボードとマウスを買い替えなくて良いだけ経済的かもな」
「ありがとう。もしもの時は有り難く使わせていただくわ。でも、いつかお返しはさせてもらうわよ?」
「はいはい。楽しみに待っておきますよ」


 元の性格故か切り替えも中々に早い。気の迷いも晴れたらしく、その後の確認も同行者の理解力の高さによってスムーズに進み、満を持して街の外へと踏み出す。朝もそれなりに日が昇った時分となれば、森の中も見通しが利くし夜間ほどモンスターの湧出も多くはない。危険が少ないからこそ日中の攻略が望ましいという見解はSAOにおけるプレイヤーの共通見解であり、セオリー通りの行動となる。多少なりとも横暴さは目立つが、グリセルダさんが伴ったことによる現状は意外と攻略に際しては模範解答と言える。装備の《ありふれた片手剣士》然とした一式からしても、押さえるべきところを外さない印象を受ける。
 それを思うと、グリセルダさんが夜に圏外に出ていた理由も気にならなくはないが、彼女も一人のプレイヤーだ。あまり深く詮索するのも気が進まない。SAOが如何に匿名性を損なったとは言っても、(いたずら)に一線を踏み越えさえしなければ、ある程度の情報は機密を保持できる。互いに一定の距離を保つくらいが丁度良い。それに、グリセルダさんを見る限りでは考えなしにハイリスクな行動に出るとも思えない。行動の理由とは人それぞれであるとしておこう。


「そう言えば、このクエストってどんな情報屋さんから貰ったの?」
「自前だ」
「え、前線の攻略をしながらクエスト探してるの? 大変じゃない?」
「違う、特技と実利を兼ねた後方支援。俺は例外なんだよ」


 一般的に攻略組と呼ばれるプレイヤーは、文字通り前線にてSAOをクリアするべく邁進する者を指す意味合いの称号だ。迷宮区
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