第1章始節 奇縁のプレリュード 2023/11
2話 試練の幕開け
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下にしなかった時点で結果は決していたのだろう。我ながら稚拙な後ろめたさに屈する弱小メンタルが残念でならない。
そのまま成り行きで交わされた申請を承諾し、晴れてグリセルダさんをリーダーとする急造PTは完成したのである。
「………自分の身くらいは守っておいてくれ。本当に頼むぞ」
「ええ、言われなくても分かってるわよ。そんなことより、あまり食べてないみたいだけど? ずっと暗い顔だし、どこか具合でも悪いの?」
「………至って好調ですが」
「じゃあ、早く食べなさい。朝食をきちんと摂らないのは良くないわ」
「いや、俺はもう二杯目なんだけど」
「大丈夫、クエストは逃げません。それに男の子なんだから、このくらい食べないでどうするの!」
どうあれ、俺は彼女のペースから抜け出すことは出来ないのかも知れない。
クエストが終わるまでの辛抱と決めつつ、常日頃のヒヨリの食欲を今だけ羨ましく思いながらも、誰に助けを乞うことも出来ない俺には眼前の理不尽に為す術もない。遅々として進まない朝食は俺の皿が空くまで続くのだった。今後の展望に一抹の不安を覚えながらも、食事を終えて店の外へ。相も変わらず人の気配のない街路は、やはり索敵スキルを用いても文字通り《人っ子一人居ない》有り様だ。マップデータを開いてグリセルダさんに見せつつ、クエストを攻略する事前の打ち合わせを開始する。
「ラーベルグから北に向かった先にクエストの目的地になるダンジョンがあるらしい。これまで未確認のダンジョンだから、俺が先行する。グリセルダさんは間違っても前に出ないでくれ。それと、もし危ないって思ったらコレを使ってくれ」
打ち合わせとは言ったものの、実質的にグリセルダさんを戦力に加えることはない。
出現するモンスターのレベルや使用スキルも判然としない、全くの未開の地に見ず知らずの同行者を連れていくのだから、自分に負い目はなくとも尽くせる手段と用意だけはするべきだろう。ということで、何らかの事由で不慮のダメージを追った場合に即応出来るようにとティルネル謹製中級ポーション《妖精の霊水》を手渡す。
「………これって、昨日も貰っちゃったけど結構な貴重品よね? 簡単に受け取って良いのかしら?」
「グリセルダさんも変なところで気を遣うんだな」
「だって、私の言い出したことで誰かに頼りっぱなしになるのも気が引けるというか………」
突然、呵責に悩みだすグリセルダさんだが、それを言うならばなぜ付いて来ようと思い立ったのか問い質すべきなのだろうけれど、敢えて口にしなかった。元を辿れば、出会って間もない相手との待ち合わせを反故にしなかった自分に責任が帰結するだろう。無用な飛び火は避けたいし、何より彼女の同行を望んでいたのは俺の方なのかも知れない。理由は定かでは
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