第1章始節 奇縁のプレリュード 2023/11
2話 試練の幕開け
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十九層、ラーベルグの片隅にひっそりと佇むカフェにて朝食を摂り終え、不愛想に皿が下げられる。実のところ、主街区とはいえ攻略の基点として前線に立つプレイヤーが身を寄せるのは決まって《迷宮区の最寄り》であり、この街自体が前線拠点として役目を果たしたのは僅か二日前後のことであった。故に、今いるこの店だって、提供する料理の味に対して知名度が上がらない穴場なのである。
店内は伽藍堂の開店休業状態であり、店主である初老のNPCは退屈そうに頬杖を付きながら店の外を呆然と眺めるのみだ。腕こそ確かなのだが、仮にも客がいるのにこの無気力感である。
それにしても、なぜ俺がこうして朝から寂れた隠れ家的な店にいるのか。それを説明するのは昨日の邂逅、グリセルダさん――――結局は《さん》付けで落ち着いた――――との一件を振り返らねばならない。
「あ、いたいた。ちゃんと言い付けは守れたようね」
「………そっちが邪魔してきたんだろうが」
「そうだったかしら?」
ふと、ドアが開かれたことで備え付けられたベルが涼やかに響き、記憶に新しい女声が店内を伝播する。声の主は言わずもがな、この店を待ち合わせ場所に指定してきた張本人であるグリセルダさんその人だ。昨夜と同様にフード付きのローブと軽金属装備、背中に盾を背負って携行する姿は模範的な片手剣士の装備だ。
グリセルダはこちらを視認するや、テーブルの向かいに腰を下ろした。椅子の背凭れに盾を掛けてから軽食を店主に注文すると、改めてこちらに向き直る。
「さてと、念のために確認しますけど、ちゃんとお家に帰ったんでしょうね?」
「……天地神明に誓って、帰宅の上で十分適度な睡眠と朝食を摂らせていただきました」
「うんうん、諦めの良さは肝心ね。それでこそ親御さんに面目が立つというものよ!」
腕を組み、一人で納得するグリセルダさんを見遣りつつ、内心で溜息を吐く。
これこそが、俺がこんな寂れた店に足を運ばなければならなくなった原因、昨夜のうちに隠しクエストの攻略を断念した理由だ。
自己紹介を終え、彼女を主街区まで無事に送り続けた。そこまでは問題ない。至って善意に満ちた一場面であろう。しかし、そのまま攻略に向けて踵を返した俺の肩を掴み、彼女もまた至って真剣な表情を以てこう宣ったのである。
『こんな遅い時間に若い子が出歩くものじゃありません!』と………
しかし、一プレイヤーである俺の行動指針に彼女が口を出すのもおこがましいと反発したものの、生きた歳の重みによる差が如実に出てしまい、というよりも正論のオンパレードによって反撃さえ行えず、気付けば説教される格好となり、モチベーションを殺がれた俺はあえなく拠点へと帰宅。
その後に持ち直して隠蔽スキルを駆使しつつ二度
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