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八神家の養父切嗣
二十七話:ホテル
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側の人間だとは思わない。数週間後には突如として管理局員に攻め込まれ無残にも散っていく定めとも知らずに。

「そんなことより、現物を確認させてほしい」
「はい。ささ、頼まれていたものはこちらです」

 手に持っていた箱を置き、厳重に包まれていた衝撃緩和剤や包みを取り除く密売人。切嗣はその様子を微動だにせず見つめながらこの男をどうするか考える。ここで情報を聞き出せるのならそのまま返せばいい。

 だが、ここで口を割らなかった場合は少々強引に聞き出すことになる。最高評議会はこの案件よりも時期に訪れる重要案件に切嗣を投入したいと考えている。そのためにこんなところで油を売っているわけにはいかないのだ。もっとも、密売人の末路はどちらであっても事故死(・・・)と決まっているのだが。

「さあ、こちらが古代ベルカ時代に作られた不思議な力を持つと言われる、黄金の杯です」
「確かに黄金だが……本物なのか?」
「はい、それは勿論。ただの黄金とは違い魔力を出してみますと、このように吸収します」

 密売人が手から赤色の魔力を放出すると、あっという間に杯は魔力を飲み込んでしまう。この性質にわずかばかりに目を見開く切嗣。密売人は驚いたのだろうと解釈しさらに説明を加えていく。

「その気になればこいつは底なしレベルで吸っていきますよ。人間じゃとてもじゃないけどこれは満たせませんよ。以前の持ち主なんかが試したらしいですけど十人がかりでも吸われ続けたとか。まあ、どれだけ注いでも特に何も起きないんですが」
「なるほど……確かに本物だろうな。しかし、毎回毎回これだけのものをどこから―――」

 そこまで言いかけたところで切嗣の耳に何かが爆発した振動が届く。ホテルの中、しかも地下の為に良く耳を澄ませなければ聞こえないが、戦場で生きてきた切嗣はすぐに察知したのだった。そろそろ頃合いだと判断し、もう一つスカリエッティから依頼されていた仕事をこなすためにデバイスを軽く操作しルーテシアに指示を送る。

「どうかされましたか?」
「どうにも上で戦闘が始まったみたいだ。激しいものになるかもしれない」
「私達も避難した方が良いでしょうか?」
「いや、機動六課が激しくとも全て防ぐだろうから大丈夫だろう。それよりも……」

 切嗣は何かを振り払うように首を振り再び出自を確かめようとする。まるで上にいる娘のことを忘れようとするかのごとく。





 切嗣が地下で違法取引を行っている頃、地上では六課とガジェットが争いを繰り広げていた。

「ヴィータ、上に逃げた敵を頼む」
「おう、シグナムは下のデカブツを頼むな」

 レリックの反応と誤認しホテルアグスタのロストロギアに群がってくるガジェット。それをシグナムとヴィータの二人が前線で攻めていき、取り
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