暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
前編
5.拉致。そして昼寝。
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ッカーが半壊し、ロッカーの扉が外れた。扉が外れたことで、俺と球磨はロッカーから投げ出され、北上と暁の目の前に、ちょうど二人で抱きあってるような体勢で倒れこんだ。

「ぐあっ……?!」
「クマッ……?!」

 俺は自身の視界に北上と暁の二人の姿を捉えた。暁ちゃんは顔をマッカッカにして、両手で目を覆っている。でも両手の隙間からは、俺と球磨をばっちりと見ている眼差しがよく見えた。

 一方の北上は、俺と球磨の顔をニヤニヤとした、実にいやらしい眼差しで眺めている。やめろ。お前たち誤解するな。これは事件だ。俺は不幸な事件に巻き込まれただけなんだ。

「ふ、ふ、二人とも何やってるのよ!!」

 暁ちゃんがマッカッカな顔で、自身の顔を両手で隠しながらそう言う。確かに暁ちゃんの気持ちは分かる。男女が抱きあった姿勢でロッカーから突然現れたら、誰だってそういう勘違いをおこ

「クマッ!」
「がふぅッ?!!」

 唐突に、俺の腹に球磨が第二撃の腹パンを叩き込んだ。やはりその腹パンは確実に俺の急所をえぐり込み、俺は再度、痛みと呼吸出来ない苦しみで、その場にうずくまらざるを得なかった。

「かひゅー……かひゅー……」
「クマッ!!」
「あ。球磨姉がハルを強奪して逃げた」
「コラー! 待たないと一人前のレディーにはなれないわよ!!」

 そして球磨は、先ほどと同じようにうずくまる俺の襟を掴むと、そのまま俺を引きずり、大浴場から一目散に逃げていった。俺という大の大人一人を引きずっている状態にも関わらず、その走るスピードは、一般人の全力疾走かそれ以上のスピードだった。

「はなせー!! 俺を巻き込むなー!!」
「ダメだクマ! ハルも一緒にいないと球磨が折檻されるクマ! ハルを盾にするクマッ!!」
「知るかー!!」

 俺を引きずりながらとは思えない恐るべきスピードで、浴場を出て、建物を出て……港を通りぬけ……灯台を後にし……丘を登り……鎮守府全体を眼下に収める小高い丘の桜の木の下まで逃げてきた球磨。いかに人間離れした妖怪ロッカー女といえど、さすがにこの距離を俺を引きずりながら走り続けるのは大変だったらしい。丘に到着するやいなや、俺の襟から手を離し、ゼハーゼハーと肩で息をしていた。

「さすがに……ゼハー……疲れた……クマ……」
「そらこんだけ走ったら疲れるだろうよ……つーか戻るぞ球磨。掃除がまだ終わっとらん」
「イヤだクマ。キリッ」
「お前どんだけわがままなんだよっ! しかも俺まで巻き込んで!!」
「こうしないと球磨が折檻されるクマ……ゼハー……キリッ」

 そんなに息を切らせちゃ、いくら口で『キリッ』とか言ってもどうにもしまらん。だが戻らなければ……この妖怪バカ力女は別にどうでもいいとして、おれには自分のノルマがあ
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