29話 ギレンの遺産 2.21
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「成程。さすがに異質に見えた訳だな。私も自分自身を知らない。研究して頂けて何よりだ」
マ・クベはフロンタルの自己不明な発言に気になっていた。
「自分を知らないとは・・・。君は物心付いたときどうしていたのかね」
フロンタルは腕を組み悩んでいた。
「・・・無人のシャトルバスの中、1人で居た。しかし身動きが取れない程、私は瀕死だった。そこが私の記憶の始まりだ」
「・・・」
「しかし自分を知らない。代わりに欲求と源泉から溢れるようなアイデアが私に備わっていた。サイアム・ビストに偶然拾われて、身体検査をした。すると私の体は可笑しかったらしい」
フロンタルが含み笑いを始めた。マ・クベはその様子を黙ってみていた。
「遺伝子レベルの障害があると。それは人類が見たことの無い、生成したことがない領域だそうだ。何故生命活動が続けられるか不明な程、私の体は既に死に体らしい」
「しかし、貴公は私の眼前に居る」
「そうですな。精神が生きる術を与えてくれていたようだと医者が匙を投げたのだ。サイアムは物好きでな。私の話を聞いては楽しそうだった。彼は私の願いの手伝いをしようと提案を持ちかけてきた。その為、私は今ここに居る」
フロンタルは傍にある鉄柵を腕で掴み、捻じ曲げた。
「筋組織らほとんどが機械制御。サイアムは自活できない私に肉体を与えた。それでも意識が飛ぶときがある。その為にあらゆる投薬で脳を騙してきていた」
マ・クベは嘲笑した。
「つまりは放っておいても人類の危機は去るということか。なんと無念な事だフロンタルよ」
「そのためのパンドラボックスでもあるのだよマ・クベさん」
フロンタルは不敵な笑いで返した。マ・クベは真顔になった。
「・・・サイコ・フレームが貴公に何をもたらすというのかね?」
フロンタルは自分の指をこめかみに当てて話した。
「ココだ。脳を強制的に操れるシステム、究極の催眠療法だ。これは投薬を凌ぐ効果をもたらしてくれる。現にズム・シテイ、そしてギレンを無力化した」
「成程。貴公の弱点は読めた」
「ほう、ぜひ聞きたいな」
マ・クベは表情を変えず、後ろに腕を組み歩き始めた。
「やはりその肉体だ。パンドラボックスの怨念さえ消えればお前も終わる」
「フッフッフッフ・・・確かにそうです。しかしアレを壊す術を貴方達は知らない」
「・・・世界の負の結晶とは真恐れ入る。それを打ち勝つ希望がそれを阻止するだろう」
フロンタルは高らかに笑った。
「ハッハッハッハ、冷徹極まるマ・クベさんも遂にヒロイックになった訳だ。リアルじゃないな。そんな根拠もない期待をするとは・・・」
「根拠はある」
「・・・」
フロンタルは笑い
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