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恋姫†袁紹♂伝
第36話
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と華雄による『演出』である。





「水関での迎撃……華雄、アンタは『下手』に戦いなさい」

「いくらお前でも私の軍を馬鹿にすることは――」

「最後まで聞く! これはボクの策よ」

「……策だと?」

 余りにも詳細を省いた賈駆の発言。華雄は数瞬怒気を発したが、策という言葉を聞きそれを四散させる。
 戦場でその策に助けられたことは、一度や二度ではない。
 普段から彼女と口論が絶えないが、軍師としての力量、才覚には信を置いていた。

「説明する前に確認だけど、個人と複数人では力量に偏りが生じること――理解してるわよね?」

「ああ」

 一対一で敵に相対しているのに対し、多対一で戦う場合。
 仲間との連携、数で勝る安心感、様々な要因が個人の武力を妨げる。
 幾度も軍を指揮し、戦をこなしてきた華雄はそれを良く理解していた。

「そしてそれは軍に対しても適用されるわ、連合は一枚岩では無い……彼等は自然と余力を残す戦い方をするはずよ」

 例を挙げるとしたら初戦の劉備軍だろう。もしも連合が純粋に水関突破に動いていた場合、華雄軍の相手は袁紹軍、或いは曹操軍だったはずだ。
 しかしこの両軍は余裕を持って高みの見物、他軍に任せてしまった。
 もしもどちらかが攻略に動いていた場合、苦戦は免れなかっただろう。
 へたをすれば初戦で水関を抜かれていた。

「アンタはその油断に付け込むの。攻防戦を長引かせて、霞の到着までね」

「それと下手に戦うことに何の繋がりがある?」

 華雄の疑問はもっともだ。いくら連合の各軍が余力を残す戦い方をした所で、自分達の不利に変わりは無い。
 そもそも余力を残せるという事は、裏を返せばそれだけ有利である証。

「アンタの軍なら初戦は心配ないわ、精鋭兵と将の力で難なく退けられるはずよ。
 ……でもそれじゃ駄目なの」

「駄目とは?」

「連合軍は決して無能の集まりじゃない。猛将とその兵の活躍を見れば次戦で必ず対応してくるわ。策と軍の質を上げて……ね、そこで――」

「『下手』に戦い、敵の余力を維持させ時を稼ぐ――か」

「…………理解できたなら話が早いわ」

 華雄が時折見せる理解力の高さ、それには本当に舌を巻く。
 彼女曰く、頭の中で想定し結果を導き出しているとの事だが――それが即興で出来る凄さを理解していない。
 しかもその殆どが勘によるものなのだ。故に、軍師が地形図を見ながら編み出す策を、戦場で大斧を振り回しながら看破し、即座に対応できる。
 軍略家としては笑えない相手だ。彼女が味方で良かったとつくづく思う。





 こうして華雄軍は下手に戦い――四日目にして本性を現したのだ。
 実は三日目まで戦っていた華
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