第36話
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連合総大将、袁紹の合同軍儀天幕内。
水関を攻略すべく新たな策を模索するため、初日のように各軍の一同が揃っていた。
その天幕内の空気、一言で表すなら『異様』だ。
殆どの者達が口を閉じ。まるでそれが当たり前のように下を、或いは虚空を眺めている。
「失態ね」
そんな水を打ったような静けさの中、華琳の辛辣な一言が聞こえる。
そこに居る者達は各地の長、或いは代表の者達だ。彼女の言葉に黙っていられるはずが無い。
平時であれば直ぐに誰かが食って掛っただろう。しかし、其処に集まるものでそれをしようとする者は居ない。否、出来ないのだ。
ある者は恥辱に震え、ある者は拳を握り締め血を滲ませる。
開戦から『四日目』が過ぎようとしていた。
初日の戦い。うって出た華雄軍を撃退しようと動いた連合軍だが、彼女の類稀なる勘働きに躱されてしまう。
一旦下がり軍列を整えようとした連合軍だったが、あろうことか華雄達を追撃した軍がいたのだ。
彼等は勢いに任せて水関を攻め立て、梯子を次々に設置し乗り込んで行く。
これに対して華雄軍の迎撃は――余りにお粗末な結果を残した。
梯子をかけられ容易く拠点を構築されるだけならまだしも、なんと水関内部の奥、門の内側付近まで侵入を許したのだ。
流石に門を開けられることは無かったものの。日没と共に退いた兵士達は興奮した様子で、『もうすぐで門前だった』などと豪語し始めた。
その言葉は瞬く間に連合に広がり……結果。連合全体の気が緩み、華雄に対して慢心し始めたのだ。
そしてその日の夜。袁紹が再び合同軍儀を開くと異常な事態が起きた。
なんと諸侯が我先にと二日目の攻撃を志願し始めたのだ。
その様子に圧巻される劉備、抑えようと奮闘する白蓮、目を細める華琳。
袁紹は――笑っていた。苦笑いだ、頬を引き攣らせ諸侯の勢いにドン引きしていた。
地平線を埋め尽くすほどの連合が控える地に攻撃を仕掛ける度胸。
劉備軍の策を逆手に取り大打撃を与える用兵術。
猛将関羽を片手であしらう武力、窮地に対する迅速な対応。
どれをとっても華雄を傑物と思わせるもので、強敵を前に気を引き締めることはあっても、油断する要素などあろうはずもない。
しかし、寡兵である劉備軍との戦局など諸侯の眼中に無く。
彼等は一心に水関の攻防に目を向けていた。連合を先駆け攻め立てた軍勢、決して強い軍ではない。
むしろ序列的にも戦力的にも下から数えたほうが早い者達で、彼らの持ち味は勇猛さだけ。
言い換えればただの猪突猛進な軍だったのだ。
そんな軍があの華雄軍を力押しで苦戦せしめた、ならば自軍が攻城戦を仕掛ければ――……
単純且つ明快な
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