世界の破壊者
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灰色の世界――自分たちが今までいた浮遊城とは似ても似つかぬその景色に、キリトの思考は勝手にソレを拒絶するものの、見れば見るほど慣れ親しんだ自分たちの家であり。そのひび割れた竹林も、何もなくなった湖も、どれもアスナやユイとの思い出がある場所だった。
「そうだ……アスナ! アスナ!」
海東が召喚したであろうライオトルーパーたちと戦っていた、愛する人の名前を思いだしたように叫ぶキリトだったが、当然ながらどこにも返答の声はない。血に染まったような空に吸い込まれていくだけだ。
「パパ……ママだけじゃなく、プレイヤーの反応がどこにもありません……」
「…………」
周囲のデータやプログラム自体にもアクセス出来るユイが、キリトにとって信じがたい事実を告げる。このALOという世界全てに、もはやプレイヤーはいないという。それでも諦めることはなく、キリトは仲間の名前を叫び続けるものの、その叫びに反応したのは仲間たちではなかった。
「パパ! 周りに何か反応があります!」
「何だ、こいつら……!?」
キリトたちの周りに何の前触れもなく現れたのは、白い昆虫型のモンスター。具体的にどの昆虫かと言われると判断に窮するが、とにかく昆虫のパーツを組み合わせて人間にしたかのような、そんな怪生物――《アルビローチ》と呼ばれる怪物だった。その動作はゆっくりとしたものだったが、明確にキリトたちを襲おうという意志を感じさせた。
「うっ……」
そのゆったりとした動作でこちらを襲う姿に、キリトはこの地獄のような大地と併せ、生理的に受けつけないゾンビのようなものを連想する。まるでバイオハザードでも起きたようだ、という嫌な想像を頭からはねのけ、ただのゾンビ型Mobだと思考を切り替える。
問題はその数。海東との戦いで疲弊した今のキリトに、いつ果てるとも知れない謎の敵と戦うのは、肉体的にも精神的にも苦しいものであった。それでも黙ってやられる訳にはいかないと、ひとまず右手に《聖剣エクスキャリバー》を構えると――
――上方から放たれた銃弾により、キリトの周囲のアルビローチたちは薙払われていく。
「これは……」
その銃弾には覚えがあった。いや、覚えがあったというより――今の今まで苦しめられてきた、というべきか。その銃弾が放たれたところを目で追っていくと、そこにいたのはやはり、キリトの予想通りの人物だった。
「海東!」
「やあ、久しぶりだね。キリトくん」
先程まで会っていたばかりだというのに、ログハウスの屋根の上に乗っていた海東は、キリトに対してそんなことをうそぶいた。そして跳躍したかと思えば、キリトを守るように立ちはだかり、ドライバーにカードを挿入していく。
「暴れておいで、兵隊さん」
『
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