第十話
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立てるようにシノンが言葉を吐く。
「・・・いいか、シノン。」
俺はシノンの方を向き、ゆっくりと口を開く。
「確かに、シノンは敵に近づかれたら危険だ。防御力は低いし、HPも俺たちに比べたらずっと少ない。しかし、シノンは遠距離要員だろう?現に、俺やキリトに遠距離から有効的な攻撃をする術は無い。役割が違う。」
シノンが顔を上げる。涙が頬を伝って地面に落ちて消えていく。
「・・・適材適所ってこと?」
涙声にそう言う。
「そうだ。今回はたまたま室内での戦闘だったし、雑魚敵が多すぎる戦いだった。これがもし野外だったら?もしくは、雑魚の殆んどいないボス攻略だったら、シノンは大活躍さ。」
最後の方、外国人ばりにオーバーなリアクションをとる。わざとらし過ぎたか?
「ふふ・・・わざとらしいわね。外国人がやってるテレビショッピングみたい。」
シノンが小さく笑いながら言った。恥ずかしくなったが、笑ってもらえたから良しとしよう。
「と、とにかく、シノンは弱くなんかないし、足を引っ張ってるとか、誰も思ってなどいない。一人で何でもできる奴なんて、このアインクラッド内にはいないと思うぞ?それに、シノンは遠距離攻撃においてはSAOで最強だと思う。だから自分を弱いだなんて思う事は無いんだ。」
「・・・分かったわ。有り難う。慰めてもらっちゃったわね。」
シノンが涙を拭き、夕陽を背にして頷く。
実際、シノン以外に弓を使うプレイヤーは未確認だし、間違いなく最強なはずだ。
「それに、強くても弱くても、シノンが危険に晒されていたなら、俺はいつでも助けに行く。必ずだ。だから、安心して狙い撃て。お前の矢でお前の敵を撃ち抜けるように。」
口から勝手に言葉が出る。俺は言った後に恥ずかしくなった。
「ばっ、ばか。そんな事言われたら・・・は、恥ずかしいじゃないのよ・・・口約束だとしても、う、嬉しくなるじゃない。」
シノンと俺はお互いに視線を泳がせる。シノンの顔は夕陽のせいでよく見えなかったが、恐らくは赤くなっているだろう。そしてそれはきっと俺も同じだと思う。
「口約束何かじゃ・・・うん。その、何と言うか・・・うん。恥ずかしいな。」
しどろもどろだな。我ながら何をしているんだろうか。胸がモヤモヤするというか、緊張すると言うか。しかし、悪い気分では無かった。
「こっちが恥ずかしいわよ。ばか。」
「あぁ・・・す、すまん。」
「謝んないでよ。ばか。」
「す、すまん・・・」
「・・・ばか。」
夕暮れの宿屋前、他のプレイヤーが通りかかるまで、俺たち二人は心地良い緊張感を味わっていた。
夕日の紅い光が眩しく、暖かい。バーチャルの世界にいる事など、すっかり忘れてしまう。俺はいつま
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