第二十三話 入学テストその三
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「確かにね」
「凄い子ね」
「凄いって?」
「何ていうかね」
そのうちの一人が私の言葉に答えてくれました。
「騒がしいのよ。これが天理高校なんだってあちこち見回って」
「あちこちって?」
「普通はあれじゃない」
いきなりあれって言われてもわからないって思うのは普通でしょうか。
「受験にしろテストだと教室で勉強するわね」
「それか静かにしているかね」
「それがその子ったら」
「ねえ」
皆顔を見合わせます。
「テストが終わる度に外に出て」
「あちこち見回ってね」
「見回るの」
「そうなのよ。見学してるんだって」
「そう言ってね。時間の限り見回ってるのよ」
「しかもよ」
何か話がさらに続きます。それにしても入学試験であちこち見回る子っていうのも本当に珍しいです。一世一代の勝負でそこまで熱中するなんて。
「その間ずっと歌口ずさんでるし」
「歌なの」
「しかも特撮とかバファローズの歌を歌いながら」
近鉄ですか。あんなチームになっちゃいましたけれど。
「とにかく変わってるのよ」
「それが凄いっていうのよ」
「そうだったの」
ここまで話を聞いてとりあえずは納得しました。
「そんな子がね。入学試験受けてるのね」
「そうなの。けれど受かるかどうかは別よ」
「落ちるんじゃないの?」
入学試験の常として受かる人もいれば落ちる人もいます。こればかりはどうしようもないです。私だって落ちる可能性はあったわけで。
「あんなのだと」
「けれど学校の成績と変なのは別よ」
これは本当のことです。変態さんでもお勉強ができたりするものです。このことは中学校でわかったことです。私のいた八条学園は大学まで変わった人ばかりでしたし。
「だから。ひょっとしたら」
「うわっ、あんな変な子がうちの高校に?」
「何か嫌なんだけれど」
「けれどあれでしょ」
ここで一人の娘が言いました。
「男の子じゃない」
「うん」
「だったら問題ないわ」
こういう結論になりました。
「男の子だったら北寮があるから」
「ああ、あそこね」
「あそこならね」
問答無用の上下関係がある場所です。流石に自衛隊とか防衛大学程じゃないそうですけれど。けれど寮の上下関係は確かなものがあります。東寮だってそうですし。
「だから。騒いでいられるのも今のうちでしょうけれど」
「でしょうね」
「いや、ちょっと待って」
けれどここですぐにまた言葉が入りました。
「そう上手くいかないかもよ」
「どうして?」
「だって。寮だけじゃないから」
寮にいるとついつい忘れてしまうことです。
「自宅生だっているじゃない」
「あっ、そうね」
「そうだったわ」
皆これを言われて気付くのでした。ここにいるのは皆東寮の娘達です。ど
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