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戦国異伝
第二百四十五話 夜においてその五
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「今日の疲れを癒し明日に備え」
「そうしてくる、用心をして物見は立てておくが」
 しかしというのだ。
「まず今夜戦はない」
「こちらも仕掛けませぬし」
「向こうも来ぬ」
 間違いなく、というのだ。
「だから安心せよ」
「では」
 家康はここまで聞いて頷いた、そうして。
 織田軍は物見は立ててもじっくりと休んだ、飯もたらふく食った。それは魔界衆も同じで双方長い夜をじっくりと休んだ。
 そしてだった、ここで。
 謙信はその夜だ、塩で酒を飲んでいた。そこには信玄もいた。
 二人で酒を飲みつつだった、謙信は笑みを浮かべて信玄に問うた。
「人の一生程わからぬものはありませぬな」
「全く以て」
 信玄も笑みで応える。
「それは」
「そうですな、わたくしはです」
「越後において」
「義を貫くつもりでしたが」
「それがしは天下です」
 信玄もかつて目指していたものを語った。
「天下を統一し」
「そしてですな」
「この天下を泰平にしようと思っていましたが」
「それでもですな」
「それはです」 
 その天下泰平をもたらすことについても言うのだった。
「それがしよりもです」
「上様が」
「はい、あの方がおられるので」
「だからですな」
「そのことがわかりましたので」 
 それ故にというのだ。
「それがしは天下の臣としてです」
「上様にお仕えして」
「そのうえで天下泰平を担う」
「そうですな」
「そう思うからこそ」
 だからという言葉だった。
「その考えを捨てました」
「そして今は」
「天下泰平を担う一臣として」
「上様にお仕えする」
「その所存です」
「左様です、わたくしもまた」
 謙信も言う。
「義はです」
「天下、上様に」
「あるからこそ」
 それだけにというのだ。
「天下の為、上様の為に」
「戦われ」
「政をしていきます」
 こう信玄に言うのだった。
「これからも」
「そうなのですな、しかし」
「しかしとは」
「貴殿とこうして酒を飲む」
「もう幾度にもですが」
「これもです」
「ですな、思えば夢の様なこと」
 二人でこうして酒を飲みだ、楽しく話をすることもというのだ。
「実に」
「確かに」
 こう二人で話すのだった。
「川中島で戦っていた頃は」
「あの時はお互いにでした」
「一歩も引かずに」
「命を賭けて戦っていた」
 まさにというのだ。
「それはです」
「何度もでしたし」
「激しい戦でしたな」
「全く以て」
 こう話す、そして。
 謙信は信玄にだ、こうも言った。
「あの時わたくしは貴殿にです」
「不義を感じていたと言われていましたな」
「幕府の命に従わぬ奸臣とです」
「拙者が守護大名であるだけに」
「甲斐だけで
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