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戦国異伝
第二百四十五話 夜においてその三

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「奴等は遂にな」
「はい、いよいよですな」
「切り札を出してきますな」
「奴等の切り札」
「それを」
「そうしてくる、しかしな」
「はい、我等にはです」
 平手がだ、信長に言って来た。
「旗がありますな」
「あの旗がな」
「だからですな」
「その妖術を破れる」
「そうですな」
「果心居士の土産じゃ」
 まさにだ、それだというのだ。
「あの者はよく渡してくれたわ」
「妖術さえ破れば」
「うむ、もうあの者達に切り札はない」
「それで、ですな」
「切り札を全て破ればな」
 信長はこうも言った。
「どの様な者もじゃ」
「敵ではありませぬ」
 ここで言ったのは柴田だった。
「散々に打ち破れます」
「そうじゃ、よいな」
「ここで決着をつけますか」
「そうしたい、しかし」
「打ち漏らせば」
「思ったよりしぶとい」
 魔界衆、彼等はというのだ。
「だからな」
「この戦でもですな」
「生き残るかも知れぬ、奴等も諦めぬわ」
 そうおいそれはというのだ。
「だからな」
「次があることもですか」
「考えておこう」
「畏まりました、さすれば」
「しかし。屋島と一ノ谷の順序は逆ですが」
 滝川は信長にこうも言った。
「この戦の流れは」
「源平のじゃな」
「あの時に似ておりますな」
「ではまさか最後は」
 今度は丹羽が言った。
「壇ノ浦ですか」
「そうなるやもな」
「あの場所で最後の戦ですか」
「若しそうなっても滅ぼす」
 信長の決意は変わらなかった、ここでも。
「奴等をな」
「一ノ谷でも壇ノ浦でもですな」
「どちらにしてもじゃ」
「あの者達を滅ぼす」
「必ずな」
 そうすることをだ、信長は家臣達に言った。
「そうする、そして天下に長い泰平と繁栄をもたらすぞ」
「既にです」
 ここで言ったのは明智だった。
「次の戦への備えは出来ています」
「若しまだ奴等が生き残ってもな」
「それでもです」
「奴等と戦えるな」
「そうなります」
 こう言うのだった。
「ですからここで魔界衆が生き延びても」
「次の戦がある」
「そしてです」
「その次の戦で、ですな」
「我等は戦える」
 是非にと言うのだった。
「だからこそな」
「次になろうともその次で」
「倒せる」
 必ず、とだ。信長は言い切った。
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