第二百四十五話 夜においてその一
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第二百四十五話 夜において
その夜魔界衆の者達も休んでいた、彼等は確かに一敗地に塗れた。
しかしその意気は盛んだった、老人も本陣で言っていた。
「今日の負けはじゃ」
「はい、明日ですな」
「明日にですな」
「ひっくり返す」
こう言うのだった。
「我等の妖術でな」
「いよいよですな」
「あの術を使う時が来た」
「そうなのですな」
「そうじゃ」
まさにと言うのだった。
「あれを使うぞ、よいな」
「はい、いよいよ」
「あの術を使って、ですな」
「そのうえで」
「織田信長を倒す」
「そうしますな」
「屋島では奇襲を受けて負けた」
夜にだ、これには彼等も驚いた。そしてただやられるだけだった。
「この一ノ谷でもな」
「これまでは、ですな」
「押されていますな」
「高所の兵も倒されましたし」
「百地殿も」
「不覚を取りました」
その百地もだ、老人のところにいて言った。
「申し訳ありませぬ」
「よい」
百地が長政の軍勢と止められなかったことをだ、老人は許してこう言った。
「それはな」
「有り難きお言葉」
「それはよい、しかしじゃ」
「はい、この戦は」
「まだ続く、だからじゃ」
「それで、ですな」
「我等が妖術を使うが」
「我等忍もですな」
「術を使え」
「忍のその術を」
「うむ、使え」
まさにという言葉だった。
「よいな」
「我等の忍術は妖術の類でもある」
「だからな」
「使わせて頂きます」
百地もこう言って老人に約束した。それは他の魔界衆の忍の棟梁である石川、楯岡、音羽もであった。四人全てがだった。
「ではその時は」
「我等もまた」
「この力の全てを出しましょうぞ」
「ここにいる十一家の棟梁全ての力を使う」
老人はその棟梁達に確かな声で告げた。
「よいな」
「はい、そうして必ずや」
「あの忌々しい者達を倒しましょう」
「陸でも海でも」
「そうしましょうぞ」
「ここから我等はこの国を壊す」
老人は笑わずだ、憎しみを込めた声で述べた。
「神武の頃より我等を退けてきたな」
「これまで長くかかりましたが」
「二千年以上もの間」
「しかしそれをですな」
「遂に」
「終わらせるのじゃ」
その妖術で、というのだ。
「いいな」
「承知」
「さすればです」
「我等これよりです」
「己の最大の術を使います」
「そのうえで勝ちましょうぞ」
「我等の妖術に敵う者はおらぬ」
一人として、とだ。こうも言った老人だった。
「だからこそな」
「朝になってですな」
「織田信長が攻めて来た時に」
「まさにその時に」
「仕掛けましょうぞ」
「では今はな」
夜である、この時はというと。
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