命の時間
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血を吐き出すと、そのまま白目を向いて動かなくなってしまう。
「なんじゃ。嬢ちゃんたちは逃がしてしまったか・・・」
俺とウェンディを食そうと考えていたジルコニスは、俺たちを逃がしてしまったことに少々残念そうな顔をしている。
「ま、前菜ということでいいか」
だが、ジルコニスは自身の指に突き刺さったその青年を見て、笑みを浮かべると、ゆっくりと口へと運ぼうとする。
「氷神・・・雹!!」
「ぬあっ!!」
だが、そんな彼に人の頭ほどある大きな氷の礫が降り落ちていく。それによりドラゴンの手に捕らわれていた青年が、転げ落ちる。
「あ・・・」
「ラウに任せて!!」
地面に頭から転落していくカミューニさん。動揺していた俺はその時何をすればいいのかわからず、金縛りにも似た感覚に陥っていたが、後ろから翼の生えたオレンジ頭の少年が現れ、巨大な雹の合間を掻い潜りながら落ち行く彼をキャッチしてこちらに戻ってくる。
「あ・・・ああ・・・」
カミューニさんを連れて戻ってきたラウル。俺たちの前に置かれた彼を見て、ウェンディは顔を真っ青にし、涙を懸命に堪えていた。
内蔵がほぼ抉られた状態になっているカミューニさん。彼は口を半開きにし、目は完全に白目を向いていた。
「ち・・・治癒!!今すぐ治癒しないと!!」
慌てた俺がウェンディにそう言う。ただ、彼女は俺の言葉すら耳に届いていないようで、唖然とし、口元に手を置き、涙をグッと堪えていた。
「ウェンディ!!」
「無理よ・・・シリル・・・」
正気を取り戻させようと肩を掴み、ウェンディを揺する。すると、その俺の手を掴み、離させる女性が現れた。
「ミラさん・・・」
その人物とは、妖精の尻尾のS級魔導士であるミラさんだった。彼女は俺の手を握り締めると、腰を下ろして目線を合わせる。
「治癒はもう間に合わない。落ち着いて、シリル」
諭すように、ただをこねて言うことを聞かない子供に言い聞かせるようなトーンで話しかけてくるミラさん。
「まだ・・・まだですよ!!カミューニさんがこんなので死ぬわけ・・・」
俺が反論している最中、ミラさんがすぐそばで呆然としているウェンディと共に、俺たちのことを抱き締める。
「カミューニは命を賭けてあなたたちを守ったのよ・・・だから・・・泣かないで・・・」
泣いてる?俺が?一瞬彼女が何を言っているのかわからなかった・・・だって、俺は彼が死んだなんて思ってない。だから全然、悲しくなんか・・・
スゥ
そう考えていると、不意に何かが目から頬を伝い、流れ出る。
「え・・・」
それが何なのか、初めはわからなかった。汗?血?それとも別の何か?
ミラさんが俺
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