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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百五十二話 暴君が生まれる時
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てことだな。とんでもない所に異動したな、或いはだからこそエーリッヒは外部から俺とアンスバッハ准将を入れたのか……。溜息が出そうだ。ウェイトレスが新しいコーヒーを持ってきた。一口飲む、やはり不味い。ギュンターを見た、彼が俺を見て笑っている。思わずこっちも苦笑が漏れた。暫く二人で笑った後、ギュンターが話し始めた。
「理由の第二は汚職に軍が関わっている事だ」
「まあそうだろうな、軍を警察が調べるなんて無理だ、戦争になりかねない。だからと言って軍と省庁を別々の組織に調べさせる事は非効率だからな」
ギュンターが俺の言葉に頷きながらコーヒーを飲んだ。不味そうな表情をしている。
「汚職の主力は兵站統括部だ」
「本当か?」
「ああ」
「しかし、昔と違って今は優秀な奴が結構配属されているんじゃないのか? 汚職も随分と減ったと聞いたぞ」
昔は落ちこぼれが配属されていた。しかしエーリッヒが頭角を現すにつれそれも変わったはずだ。徐々に徐々にだが士官候補生の意識も変わり進んで兵站統括部を配属先に希望する優秀な生徒も出てきたと聞いている。
ギュンターが苦い表情で俺に視線を向けた。何を言っている、そんな顔だな。
「あそこに出来る奴が配属されるようになったのはここ三、四年の事だ。人数も少なく階級も低い。兵站統括部全体でみればとんでもない奴の方が遥かに偉くて多いんだ」
「なるほど、それもそうか……」
「辺境星域の開発には兵站統括部を活用するとエーリッヒは決めている。その兵站統括部で汚職が蔓延している」
「頭の痛い事だな」
ギュンターが溜息を吐いた。呆れた様な表情で俺を見ている。
「頭が痛い? とんでもない、激怒しているよ」
「……」
「エーリッヒが兵站統括部に居る時は彼を怖れて目立った汚職は無かったんだ。皆無とは言わないが少なくとも騒ぎになる様な汚職は無かった。だからエーリッヒは兵站統括部を辺境開発に使う事に不安は感じていなかった……」
ギュンターが首を横に振っている。
「ところが彼が兵站統括部を去ってから汚職が増えだした。最初は恐る恐るだろうが反乱軍との戦い、そして内乱と長期にわたってエーリッヒがオーディンを留守にした……」
「チャンスと見たんだな」
ギュンターが頷く。
「その通りだ。怖い猫が居なくなって薄汚い鼠が増えたのさ。兵站統括部出身者としては昔の仲間に赤っ恥かかされたようなものだし、辺境星域の開発責任者としては裏切られた様な気持だろう」
「元々その手の不正が嫌いだしな」
「ああ、この腐敗を一掃しない限り辺境開発なんてやっても意味がない、官僚達のサイドビジネスを助長するだけだと言い切っている。国家の最優先課題だってな。ルーゲ司法尚書、ブルックドルフ保安尚書が捜査は自分達がやると言ったって納得しなかった
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