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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百五十二話 暴君が生まれる時
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接は関係ないが、周りは……、やれやれだな。
「内務省は財務、法務、軍務を除く殆どの行政を一手に握っていた。警察も握っていたからその気になれば何でも出来た、不正をする事も握りつぶす事も……。これで不正が起きないと言ったら信じるか? 不正を起こす奴と不正を握りつぶす奴、現場はともかく上層部は繋がっていた。皆一緒になって甘い汁を吸っていたんだ。それが内務省だ」
ギュンターが冷笑を浮かべている。
「内乱時、内務省がエーリッヒに敵対したのもそれが一因としてある。平民の権利なんて拡大して見ろ、不正がしにくくなる、甘い汁が吸えなくなる、そう思ったのさ」
「……酷い話だな」
「酷い話だ」
ギュンターが頷く。コーヒーを一口飲み顔を顰めた。釣られたわけではないが俺も一口飲んだ、やはり不味い。話題が酷いんだ、せめてコーヒーだけは美味いのが欲しかった。
「ギュンター、不味いな」
「ああ、不味い」
「もう一杯いこう、……今からでも遅くない、司令長官室から貰ってくるか……」
「悪くないな、それ」
顔を見合わせて笑う。ウェイトレスを呼んでコーヒーを追加注文した。
「内乱が終結し内務省は解体され幾つかの省庁に分かれた。しかし人間が入れ替わったわけじゃない。繋がりは維持された。しかし改革が進むにつれ平民の意識も変わった。これまでのように不正に泣き寝入りはしなくなった。時代が変わり社会も変わり人の意識も変わった。それに対応できる奴は良いんだが……」
「対応できない奴が居るというわけか」
「ああ、不正をする事に慣れてしまった奴がね」
ギュンターが俺に視線を向けた。
「分かっただろう、広域捜査局も保安省も使えないという理由が。昔の繋がりで不正を揉み消しかねない」
「……保安省は分かる。しかし社会秩序維持局は広域捜査局に移行する時にかなり人間を選別したと聞いている。酷い奴は排除したはずだが……」
社会秩序維持局は内乱においてもっともエーリッヒに敵対した組織だ。当然だが内乱後の処罰は厳しかった。本来社会秩序維持局は内務省内部でも最も力の有るポストだ。初代局長を内務尚書エルンスト・フォン・ファルストロング伯爵が兼任した事でも分かる。
社会秩序維持局の局長を経て内務次官というのは内務省内での出世コースの一つだ。本来なら保安省内部に残るべき組織だったが名前まで広域捜査局に変えられて司法省に移管された。しかもその時当然のように人員も削減されている。広域捜査局は司法省では外様なのだ。常に冷たい目にさらされている。
「周囲はそう見ていない、昔の印象が強すぎるからな。アントン、社会秩序維持局が平民達を弾圧するためにルドルフ大帝が作った組織だという事を忘れてもらっては困るな」
「なるほど」
一度貼られたレッテルを外すのは容易じゃないっ
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