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五十層での話
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 いつもと変わらない生活。一日の半分以上を前線の迷宮で過ごすして、最近買った六十四層の和風のプレイヤーホームに戻るのが唯一の楽しみだ。誰かが帰りを待ってるわけではないが、それでも帰ってくることによって、今日も生きているという実感が湧く。それでも早くクリアしなければと思っている。この世界に慣れてしまうのが怖いから。この世界に二年も閉じ込められてもその意思だけは変わらない。そして今、七十四層を突破するために必死こいて踏破している。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「おいおい、S級のレアアイテムじゃねえか。《ラグーラビットの肉》か、俺も現物は見るのは初めてだぜ……。キリト、おめぇ別に金には困ってねえんだろ?自分で食おうと思わなかったのか」

 チョコレート色した肌の大柄なプレイヤー、エギルがもったいないと言わんばかりに言う。

「思ったさ。多分二度と手に入らんだろうしな……。ただ、俺の知ってる中でこんな高級食材扱えるのなんてゲツガぐらいしか知らないし……」

「ゲツガに頼めばいいじゃねえか。フレンド登録してるんだしよ」

「バカ言え。あいつはこっちに来てかなりの音信不通なんだよ。メールしても今の時間帯ならほぼ確実に迷宮くだっつうの」

 その時に誰かから肩をつんつんとつつかれた。

「キリト君」

 女の声。このように呼ぶプレイヤーは俺の知る限り二人しか知らない。声から察して呼んだプレイヤーの手を取り振り向きざまに言う。

「シェフ確保」

「な……なによ」

 相手は俺に手を掴まれたままいぶかしげな顔で後ずさった。そこにいたのは、SAO内で人数の少ない女性プレイヤーの中で五本の指に入るほどの美人、Kob副団長《閃光》のアスナだ。しかもその後ろには、アスナにも劣らないほどの美人、そしてこちらもKob所属の《姫騎士》のユキもいた。

「珍しいな、ユキ、アスナ、こんなゴミ溜めに顔出すなんて」

 俺がアスナとユキを呼び捨てしたことで後ろの長髪の男が表情を引きつらせ、エギルは店をゴミ溜め呼ばわりされて顔を引きつらせたがアスナとユキが声をかけた瞬間だらしなく顔を緩ませる。アスナは俺に向き直ると、不満そうに口を尖らせた。

「なによ。もうすぐ次のボス攻略だから、ちゃんと生きてるか確認しに来てあげたんじゃない」

「フレンド登録してんだから、それくらい判るだろう。そもそもマップでフレンド追跡したからここに来られたんじゃないのか」

 言い返すとぷいっと顔を背ける。

「アスナはきりt……」

「あー!!あー!!あー!!」

 ユキが何か言いかけてたがアスナが顔を赤くして突然大きな声を出して遮る。そしてアスナも何か仕返しとばかりと言う感じに言った。

「そういうユキこそ、ゲツガ君に会え
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