Side Story
少女怪盗と仮面の神父
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ら、あっさり承諾してくれた。
実際、勉強してる面もあるので、嘘は言ってない。
言ってないが、黙っていることへの罪悪感は大きい。
「良いわよー。世界を知るには、目と足の実感が肝心だもんね。どんっどん出歩きなさい。でも、不貞の輩には十分気を付けるのよ? ミートリッテはとびきり可愛いんだから。怪しい男には絶対! ついていっちゃダメ!」
昨夜、この家で拉致されたよ。
とは、言えない。
「もう! 私、ちっちゃな子供じゃないんだよ。ハウィスこそ、酒場で暴力男に絡まれないでね。海の男は黒いしでかいし、粗暴者ばかりで嫌いよ」
「あはは! 残念ね、色白で控えめで頼りない王子様が南方領に居なくて」
「……訂正する。男は全員嫌い。」
「ふふ。ミートリッテ、かーわいいっ!」
女という生き物は、どうしてこう、男と女をくっつけたがるのか。
隙あらば恋愛話に持ち込もうとする性質が不思議でならない。
ハウィスの場合は、仕事で毎日夕方から深夜まで海の男ばかり相手に酒や料理を提供してるから、女の華やぎ成分が足りてないのかも知れないが。
そういったものを自分に期待しないで欲しいと。
ミートリッテは日々、切実に思っている。
「とにかく、夕飯の時間まで家のことはお願いね」
朝食最後の一口をよく噛んで喉に流し、逃げるように席を立つ。
「はいな。遅刻ギリギリでしょ? 洗い物もやっとくわ。急いで支度して、行ってらっしゃい」
「ありがと! じゃ、今度何かあったら代わるね。行ってきます!」
「気を付けてねえ〜」
使った食器を洗い場に置き。
二階に与えられている部屋で素早く作業服に着替えて、果樹園へと走る。
午前中は摘果作業が中心の予定だ。
昼食までに終わったら、ジャム作りのほうも少し手伝って。
それが済んだら、とりあえず果樹園での仕事は片付く。
問題は、その後。
目指すは昨日の朝まで通う人がほとんどいなかった、村の南端に位置する崖上の小さな教会。
先日、新しい神父が着任したらしいと、風の噂で聞いてはいたが。
前任の神父と比べると、相当人気が高そうだ。
傍若無人な海賊が立ち寄るのを拒絶しちゃうくらいには。
「私だって、人が多く集まる場所にはあんまり行きたくないんだけどなあ。まったく! 衆人環視に飛び込む仕事の、何が簡単なんだっての!」
どこへ向かうにも不便な地形。故に入らぬ通らぬ、人と物。
それでも課される高い税……など、様々な難事情により、真っ当な仕事が極端に少ない、アルスエルナ王国南方領南西部の、更に南西端。
海と山脈と国境に囲まれた、正真正銘『行き止まりの村』ネアウィック。
さて。
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