暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父
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て果樹園へ走る。
 午前中は摘果作業が中心の予定だ。昼食までに終わったらジャム作りも手伝って、とりあえず果樹園での仕事は片付く。
 問題はその後。
 目指すは昨日の朝まで通う人が殆どいなかった、村の南端に位置する崖上の小さな教会。
 新しい神父が着任したとは聞いていたが、前任の神父に比べると相当人気が高そうだ。海賊が立ち寄るのを拒絶しちゃうくらいには。
 「私も、人が多い所には行きたくないんだけどなぁ……ったく、衆人環視に飛び込む仕事の、何が簡単なんだっての!」
 何処へ向かうにも不便な地形。故に入らぬ通らぬ人と物。それでも課される高い税……等、様々な難事情により真っ当な仕事が極端に少ないアルスエルナ王国南方領南西部の、更に南西端。
 海と山脈と国境に囲まれた、正真正銘『行き止まり』の村・ネアウィック。
 さて、午後を迎えて暇を持て余す女衆がどんだけ集まっているのやら……。
 先月十八歳になったばかりの少女は、痛む頭を抱えつつ、半ばやけくそ気味に二つの仕事を開始する。


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