Side Story
少女怪盗と仮面の神父
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かった?」
「んーにゃ。ちょっとお腹が空いただけよ」
もう朝食の時間かと、慌てて換気用の窓を確認すれば。
ガラスの向こうに広がった空はすっかり青く染まっている。
回想に気を取られて、調理がおざなりになっていたようだ。
急いでテーブルの準備もしなければ、一日の予定が狂ってしまう。
「もう少し待ってて。今日は贅沢に、トースト二枚とポテトサラダ、しかもオニオンスープ付きよ!」
「ぅわお、素敵! でも、大丈夫? 今月のお給料……」
「お金の話は無ーしっ! 働き盛りの可愛い娘に、全部お任せなさいな」
からから笑ってウィンクを一つ。
何かを言われる前に、手早く盛りつけを始めた。
ハウィスには、シャムロックの正体を話してない。
万が一同居人が犯罪者であると知られたら、間違いなく彼女や村の人達に多大な迷惑が掛かるからだ。
七年前、自身の生活も危ういのに、行く当てもなくさ迷うミートリッテを快く拾ってくれた、優しい女性。
薄汚い子供を笑顔で受け入れてくれた、温かい村の人達。
『怪盗シャムロック』は、困窮する彼らの助けになりたくて勝手に始めた裏稼業。巻き込んでしまっては意味がない。
なので、日中は自分と怪盗の無縁を装う為、村の果樹園で仮働きをさせてもらい、すずめの涙な報酬を必死に掻き集めて生活費に充当している。
その報酬も、ほぼ全額二人分の食費に消えていくと知るハウィスがたまに表情を曇らせるのは心苦しいが。
良くも悪くも、現状が未成年の自分にできる限界だ。
まだまだ足りないけど、この程度の恩返しはさせて欲しい。
言葉にこそ表さないが、ミートリッテの行動原理はいつでも、ハウィスを筆頭とした恩人達への感謝にあった。
「あ、ハウィス。帰りは遅くなりそうだから、夕飯は先に食べちゃってね」
木製のテーブルに二人分の朝食を並べ、向かい合わせで椅子に座る。
自然の恵みと村人達の労働に手を合わせてから頬張った料理は、贅沢した甲斐があってどれも美味しい。特にスープは、じっくり煮込んだおかげで、とろりと溶けるオニオンの舌触りが絶妙。
独特の刺激も、びっくりするほどの甘味に変わっていて、薄切りした時に目を痛めた辛みはどこへ消えたのかと、首をひねりたくなった。
「え? 夕食より後の時間まで? もしかして、観光?」
「ん……。今回は散歩みたいな距離だけど」
観光とは、シャムロックが各地で下見に奔走する為の、表向きの口実だ。
怪盗になろうと決めた当初は、十日以上家を空ける場合もあるし、路銀は二年分のへそくりでなんとかなるけど、未成年の行動にしては唐突すぎて、許可を得るのは難しいかとも思っていたのだが。
見聞を広めて自分の糧にしたいと言った
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