Side Story
少女怪盗と仮面の神父
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渡しは五日後の今頃に、この場所で。よろしく頼むぜ、アルスエルナ王国の怪盗、シャムロックさん」
背後に立つ二人の男が、頭を下げながら扉を開き、左右に避けた。
室外には見慣れた女物の靴が一足、ご丁寧に踵を揃えて置かれている。
話は終わりか。
行きは堆肥のように袋詰めにして抱えてきたクセに。
帰りはまるで、貴族のお嬢様のお見送りだ。
それならいっそ送迎用の馬車くらいは用意しておけば良いものを。
女一人をカンテラの一つも持たせずに夜の闇へと放り出す、この無神経。
つくづく癪に障る男達だ。
ミートリッテは不機嫌を隠さず、酒瓶の男に背を向け
「アンタが戻ってくるまで、オネェサマは俺達が大事に見守っててやるよ。大事に、な」
「…………っ!」
怒りに肩を震わせながら、船床に穴を空ける勢いで一歩目を踏み出した。
シャムロックは、アルスエルナ王国の南方領を中心に活動する義賊だ。
約五年前に突然現れてからというもの、鍛え抜かれた騎士すらも翻弄する素早い動きと、何重にも警戒線を敷く獲物の周辺を事前に調べ尽くしていたとしか思えない手腕で、貴族達には『山猫』、一般民には『シャムロック』と呼ばれ、恐れられている。
当然だが、これまでに顔どころか性別だって、誰にも知られた例は無い。
侵入の痕跡は髪の毛一本すらも残さない、を徹底していたのに、わざわざ隣国から来たらしい海賊は、どうやってミートリッテに行き着いたのか。
不意打ちすぎて、してやられた感が半端なかった。
しかも目的の物を手に入れたら解放してやる的なセリフを吐いていたが、仕事を無事に終わらせたとしても、弱味を握られている事実は変わらない。
使えるカードを一度で捨てる輩じゃないのは、傍目にも明らかだろう。
今回の仕事を成功させれば、絶対に次がある。
次を成功させれば、また次、更に次。
その都度、人質の将来的な安否を匂わせて。
完全な泥沼路線だ。
冗談じゃない。
「根性汚い盗人共の手足になりたくて始めたんじゃないっての。バーデルの領海に沈んじゃえ、クソったれ!」
昨夜の海賊を思い浮かべながら、茹でたポテトを力の限り潰しまくる。
金物のボウルが、調理台の上でガタゴト忙しく躍動した。
すると。
「おはよー……なぁに? ずいぶん荒れてるのね、ミートリッテ」
暁の手前頃に仕事から帰ってきて、二階の自室で就寝していた同居人が、寝惚け顔をひょこっと覗かせた。
左肩で巻いた金色の髪が柔らかく弾み。
大人な色気を醸し出している群青色の虹彩が、ミートリッテを見て瞬く。
「あ。おはよう、ハウィス。ごめん。うるさ
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