暁 〜小説投稿サイト〜
Tales Of The Abyss 〜Another story〜
#30 見捨てられない想い
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練船がもう直ぐ寄港する予定だ……それに乗って帰ればいい」

 つまり、要求には応じない構え。答えを変えるつもりもなさそうだ。

「ですがヴァン。……それではアリエッタの要求を無視する事になります」

 イオンの性格なら、捕まっている人達を、そのまま放っておくような事は出来ないだろう。チーグルの為に、単身森へ入っていった事もあるのだから。

「見捨てるのは……、やっぱり、あんまりだと思う、俺も……」

 アルもイオンの意見に賛成だった。
 だが、それらの意見を訊いても、ヴァンは極めて冷静に話を続けた。

「今は、戦争を回避する方が重要なのでは……?」

 ヴァンは静かにそう言った。言い聞かせる様に。確かに、その言葉が何よりも正論だった。たった数人の命と大勢の命。比べるべくもないだろう。

 戦争が起きれば、これとは比べ物にならないほど犠牲が出るだろう。

 確かに、優先などといいたくはないが 完全に否定をする事も出来ないからこそ、イオンは何も言えず、俯いてしまっていた。
 それは、アルも同様だった。反論をしようにも、言葉が見つからないのだ。アル自身が、戦争を回避して欲しい、そう願う者の1人なのだから。

「……アリエッタの事は、私が処理する。船が来るまで此処で待機してもらいたい」

 ヴァンは、そう言い残すと、部屋を出て行ったのだった。



 残された者達は、誰も言葉がなかった。
 そんな中で、声を上げる者がいた。

「攫われた人どうなるんですの? 助けてあげないんですの??」

 ミュウだけが、今の気持ちを、正直に言っていた。悲しそうな表情をして。

「うっせーな! ヴァン師匠(せんせい)が何とかするって言ったんだから 任せておけばいいんだよ!」

 ルークはまるで意に介していない様子だった。
 
 この時……いや、この時だけじゃない。アルは ルークが()と再会をした時から、思っていた事だった。
 ルークは、師匠(ヴァン)の事になると、いつも見えていない視界がさらに狭まる。それは、盲目になる、とも言えるだろう。
 
 だからこそ、更に強く思うのは、『今のままで、大丈夫なんだろうか?』と言う事だった。

 確かに、上に立つ者としての気品もあり、冷静な判断力もある。大局を見誤らない判断も降せる。……ヴァンは、隙がなくしっかりとした感じの人。だと言うのが、第一印象だったけれど。

 そう考えていた時、アルの中には少し不安が頭を過ぎっていた。それは、ルークに対してだけではなかった。

 その要因のひとつが、ティアである。

 ティアは、己の命を賭けて、自分の兄を討たんとしていた。

 確かに 肉親同士の争いは悲しい事だ。本当の記憶は無いアルだけれど、家
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