第六章
[8]前話
だがそれでもだ、矢田は基地に戻って仕事をしている時に森下にささやかな感じの微笑みを浮かべてこんなことを言った。
「家に帰ったらね」
「ご家族お元気でしたか?」
「うん、娘がね」
彼が愛するその娘がというのだ。
「出迎えてくれてね」
「それはよかったですね」
「抱きついてくれたよ、おかえりなさいって言ってくれて」
このことを話すのだった。
「それで女房もご馳走を用意してくれたよ」
「奥さんもですか」
「僕の好きなものばかり出してくれてね」
「いい奥さんですね」
「久しぶりに会って余計にそう思ったよ」
家族のことを話すのだった。
「二人共元気で何よりだったよ」
「私もです」
森下も言うのだった。
「彼氏に久しぶりに会って」
「どうだったのかな」
「はい、デートで凄くよくしてくれました」
「そうだったんだね」
「最高でした」
久しぶりに会った彼氏とのことがというのだ。
「彼も元気でしたし」
「そうだったんだね」
「はい、それで今度」
「今度?」
「結婚しようって言ってくれました」
「彼氏の人は自衛官かな」
「いえ、作家なんです」
森下は自分の交際相手のことをだ、矢田に話した。
「小説以外にも色々書いていまして」
「あっ、じゃあ移動も出来るね」
「はい、自衛官は転勤が常ですけれど」
数年で日本の基地の何処かに移る、しかもそれは幹部自衛官になれば尚更だ。自衛官になれば日本中を転勤することになる。
「それでもなんです」
「彼氏の人はだね」
「何処でも行けます」
「君と一緒にだね」
「ですから今度です」
「結婚するんだね」
「そしてずっと一緒にいようって」
森下は完全にのろけている顔でだ、矢田に話した。
「言ってくれました」
「そう、それじゃあね」
「はい、結婚します」
「おめでとう、幸せになってね」
矢田は微笑んで森下のそのことを祝福した、そうして彼もだ。家で妻や娘と共に幸せに過ごすのだった。
その彼と森下を見てだ、周りは今度はこう言った。
「ああした人達もいいな」
「そうだよな、仕事は出来ないけれど」
「いざという時には頼りになるし」
「凄くいい人達だよな」
「あの人達は信用出来るし」
「困った時はな」
二人はいいというのだ、そう話してだった。今は暖かい目で見るのだった。彼等を。
どんくさいヒーロー 完
2015・10・25
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ